2019年のクラシック候補生を確認する(其の拾漆)

エメラルファイト 牡 芦毛 2016.4.9生 浦河・金成吉田牧場生産 馬主・高橋勉氏 美浦・相沢郁厩舎

エメラルファイト(2016.4.9)の4代血統表
クロフネ
芦毛 1998.3.31
種付け時活性値:0.25
フレンチデピュティ
栗毛 1992.1.30
Deputy Minister
黒鹿毛 1979.5.27
Vice Regent 1967.4.29
Mint Copy 1970.2.24
Mitterand
鹿毛 1981.2.19
Hold Your Peace 1969.124
Laredo Lass 1971.3.19
ブルーアヴェニュー
芦毛 1990.2.15
Classic Go Go
鹿毛 1978.2.11
▲Pago Pago 1960
Classic Perfection 1972.4.22
Eliza Blue
芦毛 1983.4.11
Icecapade 1969.4.4
コレラ 1978.2.18
セトウチソーラー
鹿毛 2007.4.14
仔受胎時活性値:2.00
スペシャルウィーク
黒鹿毛 1995.5.2
種付け時活性値:0.75
サンデーサイレンス
青鹿毛 1986.3.25
★Halo 1969.2.7
Wishing Well 1975.4.12
キャンペンガール
鹿毛 1987.4.19
マルゼンスキー 1974.5.19
レデイーシラオキ 1978.4.3
サマーヴォヤージュ
黒鹿毛 1997.4.15
仔受胎時活性値:0.25
Summer Squall
鹿毛 1987.3.12
種付け時活性値:0.25
★Storm Bird 1978.4.19
Weekend Surprise 1980.4.8
La Voyageuse
黒鹿毛 1975.5.9
仔受胎時活性値:1.25
Tentam
黒鹿毛 1969.4.24
種付け時活性値:1.25
Fanfreluche
鹿毛 1967.4.9
仔受胎時活性値:1.75

<5代血統表内のクロス:Northern Dancer5×5×5>

エメラルファイト(2016.4.9)の0の理論的総括
母父 祖母父 曾祖母父
クロフネ
(Deputy Minister系)
スペシャルウィーク
(Halo系)
Summer Squall
(Storm Bird系)
Tentam
(Intent系)
形相の遺伝 料の遺伝 牝系 母の何番仔?
Tentam 5.25 高祖母と曾祖母が加国殿堂馬
(No. 4-g)
4番仔
(3連産目)

2019年の第68回スプリングS(GII)。世知辛い昨今の中央競馬で「師弟愛の結実」を見ると嬉しくなるものです。フルゲート16頭立てで戦前10番人気だったエメラルファイト、道中は中団7番手で折り合い、4角では馬群外側から堂々と抜け出しに掛かると、内の7番人気のディキシーナイト(2016.4.22)、外の1番人気のファンタジスト(2016.4.22)を振り切って、見事1着でゴールイン。その勝ち時計1分47秒8は、中山芝1800mで行われたスプリングSでは史上3位の好時計。エメラルファイト、2019年に入ってからの白梅賞、スプリングSの連勝を以て、クラシック候補に名乗りを上げました。伊達に2018年末の第70回朝日杯フューチュリティS(GI)でメンバー最速の上がり3ハロン33秒6を計時していません。そんなエメラルファイトの鞍上は石川裕紀人騎手、管理は相沢郁調教師。所属厩舎で普段からエメラルファイトの調教を付けられているという石川騎手、師匠の管理馬での重賞制覇は嬉しさも一入だったでしょう。相沢師にとっても、愛弟子とのコンビによる初めての重賞制覇は格別だったのではないでしょうか。そしてまた、馬主の高橋勉オーナーにとっても、JRA重賞初勝利と相成りました。自身に関わる人間に喜びを運んだエメラルファイト、その馬名意味は「冠名+戦い」。

では、以下にエメラルファイトの簡単な近親牝系図を示しておきます。なお、近親牝系図内のレース名、格付けはいずれも施行当時のものです。

La Voyageuse 1975.5.9 26勝 カナディアンオークスほか
|Society Lady 1990.3.30 0勝
||Bint Allayl 1996.1.19 3勝 ロウザーS(英GII) クイーンメアリーS(英GIII)
||Kheleyf 2001.1.11 3勝 ジャージーS(英GIII)ほか
||Laa Rayb 2004.2.13 8勝 クインシー賞(仏GIII)ほか
|Time Bandit 1996.1.12 3勝 サンフォードS(米GIII) バシュフォードマナーS(米GIII)ほか
|サマーヴォヤージュ 1997.4.15 3勝
||セトウチソーラー 2007.4.14 0勝
|||エメラルファイト 2016.4.9 (本馬) スプリングS(GII)

エメラルファイトの牝系は4号族g分枝系。曾祖母La Voyageuseは通算56戦26勝、2着10回、3着7回の女丈夫で、加国の年度表彰であるソヴリン賞において1978年の最優秀3歳牝馬、1979年の最優秀古牝馬、1980年の最優秀短距離馬と3年連続で受賞を果たした名牝でした。そしてまた、高祖母Fanfreluche。Nijinsky(1967.2.21)と同じ1967年生まれ世代のNorthern Dancer(1961.5.27)2年度産駒は、通算21戦11勝、2着6回、3着2回。Fanfrelucheは加国の枠を超えて米国でもアラバマSを制する活躍を見せて、1970年の加国年度代表馬に選出されました。

Fanfreluche。サスガに世界的な活躍を見せている牝系だけあり、日本でもその血に縁がある馬が見られます。

  1. エリモシブレー(1972.2.25)
    →Fanfrelucheの全弟。マル外として3勝を挙げた後、種牡馬として阪神3歳S勝ち馬サニーシプレー(1978.4.21)を輩出
  2. レッドアリダー(1991.6.20)
    →Fanfrelucheの最晩年の産駒。マル外として4勝を挙げ、藤沢和雄厩舎の同期生であるタイキブリザード(1991.3.12)の帯同馬として、母の故郷である加国に遠征
  3. スマコバクリーク(1985.4.25)
    →Fanfrelucheの孫。輸入種牡馬としてオギティファニー(1991.3.14)を輩出

などなど。エメラルファイト、Fanfrelucheの玄孫としてその系譜に名前を連ねることになりました。

#余談。「スマコバクリーク」の名前の響きは、オギティファニーの活躍時に「不思議」と思ったものです。改めて確認すると、その英字綴は「Smackover Creek」。スマックオーバークリーク、略してスマコバクリークでしたか^^;

*

ランスオブプラーナ 牡 黒鹿毛 2016.3.31生 新ひだか・フジワラフアーム生産 馬主・五影慶則氏 栗東・本田優厩舎

ランスオブプラーナ(2016.3.31)の4代血統表

ケープブランコ
栗毛 2007.4.20
種付け時活性値:0.00

Galileo
鹿毛 1998.3.30
Sadler’s Wells
鹿毛 1981.4.11
Northern Dancer 1961.5.27
Fairy Bridge 1975.5.4
Urban Sea
栗毛 1989.2.18
Miswaki 1978.2.22
Allegretta 1978.3.10
Laurel Delight
栗毛 1990.4.14
Presidium
鹿毛 1982.5.25
General Assembly 1976.4.30
Doubly Sure 1971.5.3
Foudroyer
栗毛 1980.2.24
アーテイアス 1974.2.26
Foudre 1975
マイプラーナ
黒鹿毛 2006.4.26
仔受胎時活性値:0.25
マンハッタンカフェ
青鹿毛 1998.3.5
種付け時活性値:1.75
サンデーサイレンス
青鹿毛 1986.3.25
★Halo 1969.2.7
Wishing Well 1975.4.12
サトルチェンジ
黒鹿毛 1988.4.2
Law Society 1982.2.16
Santa Luciana 1973.4.4
チェリーコウマン
鹿毛 1989.4.20
仔受胎時活性値:2.00(0.00)
スプレンデイドモーメント
黒鹿毛 1983.3.29
種付け時活性値:1.25
Storm Bird 1978.4.19
Racquette 1977.4.8
チエリーガール
栗毛 1982.3.27
仔受胎時活性値:1.50
クラウンドプリンス
栗毛 1969.1.31
種付け時活性値:1.00
チエリービーナス
黒鹿毛 1976.3.22
仔受胎時活性値:1.25

<5代血統表内のクロス:Northern Dancer4×5>

ランスオブプラーナ(2016.3.31)の0の理論的総括
母父 祖母父 曾祖母父
ケープブランコ
(Sadler’s Wells系)
マンハッタンカフェ
(Halo系)
スプレンデイドモーメント
(Storm Bird系)
クラウンドプリンス
(Raise a Native系)
形相の遺伝 料の遺伝 牝系 母の何番仔?
マンハッタンカフェ
(Athanasius)
5.00 or 3.00 祖母がGIII勝ち馬
(No. 6-a エスサーデイー系)
3番仔
(不受胎後)

2019年の第66回毎日杯(GIII)。戦前3番人気だったランスオブプラーナと松山弘平騎手。好発からハナに立って作り出したペースは1000m通過が60秒7のイーブンペース。直線、最内で脚を伸ばすと上がり3ハロン34秒3の脚でまとめて、決勝点では2番人気のウーリリ(2016.4.5)と福永祐一騎手の猛追を「クビ」だけ凌ぎ切りました。ランスオブプラーナと松山騎手、伊達にきさらぎ賞(GIII)でダノンチェイサー(2016.2.6)の3着、アルメリア賞で1着と芝1800mで好戦を続けて来た訳ではありません。ましてや、アルメリア賞は毎日杯と同じ阪神芝1800mだったのです。ランスオブプラーナ、その馬名意味は「プラーナ(母名の一部)の槍」ということです。

ランスオブプラーナの父ケープブランコは、嬉しい産駒のJRA重賞初制覇となりました。日本軽種馬協会が種牡馬として導入した同馬は、現役時代に9勝を挙げ、愛ダービー(GI)、愛チャンピオンS(GI)、アーリントンミリオンS(米GI)、マンノウォーS(米GI)、ターフクラシック招待S(米GI)、ダンテS(英GII)、フューチュリティS(愛GII)、タイロスS(愛GIII)と欧米でGレース8勝、うちGI5勝の名馬です。0の理論的には、ケープブランコはその父Galileoが満8歳時のミニモの遺伝を受けており、また日本供用初年度である2015年は、ケープブランコ自身が満8歳時の0交配の年回りでした。Sadler’s Wells系は、代を経ると素軽さが増して日本の馬場でも活躍できる印象もあります。ケープブランコの種付け頭数は右肩下がりではありますが、繁殖シーズンの良い時期にランスオブプラーナが重賞勝ちを収めてくれましたので、巻き返しを期待したいと思います。

では、以下にランスオブプラーナのごく簡単な近親牝系図を示しておきます。なお、近親牝系図内のレース名、格付けはいずれも施行当時のものです。

チェリーコウマン 1989.4.20 5勝 ウインターS(GIII)
|マイマスターピース 1997.4.26 3勝 昇竜S(OP) 兵庫チャンピオンシップ(統一GIII)3着
|マイプラーナ 2006.4.26 4勝
||ランスオブプラーナ 2016.3.31 (本馬) 毎日杯(GIII) きさらぎ賞(GIII)3着
|アンバルブライベン 2009.2.17 8勝 京阪杯(GIII) シルクロードS(GIII)ほか

ランスオブプラーナの牝系は、6号族a分枝系であるエスサーディー(1902)系。奥羽種馬牧場が導入した同牝馬の仔孫には、平成の活躍馬としてはネーハイシーザー(1990.4.27)ライブリマウント(1991.6.5)、メイセイオペラ(1994.6.6)、ツルマルボーイ(1998.3.5)トーシンブリザード(1998.5.15)カリブソング(1986.4.13)ユキノビジン(1990.3.10)等の名前が見えます。

さて、ランスオブプラーナの祖母チェリーコウマンは、懐かしの中京ダート2300m時代のウインターSの勝ち馬。ナリタハヤブサ(1987.4.28)のウインターS3連覇を阻止した1992年の第9回、16頭立て9番人気、52kgの軽量を活かした現年齢表記3歳牝馬の一発駆けは、菊沢隆仁騎手の唯一の重賞勝ちでもありました。そんなチェリーコウマンは直仔2頭マイマスターピース、アンバルブライベンが中央でオープン馬となり、孫の代でもランスオブプラーナを輩出するなど、優れた繁殖牝馬にもなりました。目にも見よ、一世紀を超えて継承される日本土着牝系の底力、というところです。

  

それでは、これから走る馬、人すべてに幸多からんことを。

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