エアシャカール 牡 黒鹿毛 1997.2.26生~2003.3.13没 千歳市・社台ファーム生産 馬主・(株)ラッキーフィールド 栗東・森 秀行厩舎
サンデーサイレンス 青鹿毛 1986.3.25 種付け時活性値:0.50【10】 |
★ Halo 黒鹿毛 1969.2.7 |
Hail to Reason 黒鹿毛 1958.4.18 |
Turn-to 1951 |
Nothirdchance 1948 | |||
Cosmah 鹿毛 1953.4.4 |
★Cosmic Bomb 1944 | ||
Almahmoud 1947.5.18 | |||
Wishing Well 鹿毛 1975.4.12 |
Understanding 栗毛 1963.2.17 |
★Promised Land 1954.3.31 | |
Pretty Ways 1953.3.21 | |||
Mountain Flower 鹿毛 1964.3.23 |
Montparnasse 1956 | ||
Edelweiss 1959.2.15 | |||
アイドリームドアドリーム 鹿毛 1987.3.31 仔受胎時活性値:0.25【9】 |
★ Well Decorated 黒鹿毛 1978.3.30 種付け時活性値:0.00【8】 |
Raja Baba 鹿毛 1968.4.5 |
Bold Ruler 1954.4.6 |
Missy Baba 1958.5.13 | |||
Paris Breeze 黒鹿毛 1971.4.15 |
Majestic Prince 1966.3.19 | ||
Tudor Jet 1964.3.15 | |||
Hidden Trail 鹿毛 1975.4.14 仔受胎時活性値:0.75【11】 |
Gleaming 黒鹿毛 1968.2.29 種付け時活性値:1.50【6】 |
Herbager 1956.4.19 | |
A Gleam 1949 | |||
Tobacco Trail 黒鹿毛 1969.4.19 仔受胎時活性値:1.25【5】 |
★Ribot 鹿毛 1952.2.27 種付け時活性値:0.00【16】 |
||
On the Trail 鹿毛 1964 仔受胎時活性値:1.00【4】 |
<5代血統表内のクロス:なし>
父 | 母父 | 祖母父 | 曾祖母父 |
---|---|---|---|
サンデーサイレンス (Halo系) |
★Well Decorated (Bold Ruler系) |
Gleaming (Herbager系) |
★Ribot (Rabelais系) |
形相の遺伝 | 料の遺伝 | 牝系 | 母の何番仔? |
Gleaming (A Gleam) |
3.25 (【9】+【11】+【5】+【4】) |
半姉エアデジャヴー、姪エアメサイア (No. 4-r) |
3番仔 (不受胎後) |
*
着 順 |
馬 番 |
馬名 | 性齢 | 斤 量 |
騎手 | 走破 時計 |
着差 | 通過 順位 |
上り 3F |
馬体重 [増減] |
調教師 | 人 気 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 16 | エアシャカール | 牡3 | 57 | 武 豊 | 2:01.8 | 15-15-15-8 | 35.0 | 492 [-8] |
森 秀行 | 2 | |
2 | 3 | ダイタクリーヴァ | 牡3 | 57 | 高橋 亮 | 2:01.8 | クビ | 4-4-4-3 | 35.8 | 490 [-6] |
橋口 弘次郎 | 1 |
3 | 14 | チタニックオー | 牡3 | 57 | 角田 晃一 | 2:02.2 | 2 1/2 | 17-17-16-17 | 35.1 | 478 [+2] |
渡辺 栄 | 13 |
4 | 2 | ジョウテンブレーヴ | 牡3 | 57 | 蛯名 正義 | 2:02.2 | ハナ | 6-6-6-6 | 36.1 | 472 [+6] |
相沢 郁 | 6 |
5 | 15 | ヤマニンリスペクト | 牡3 | 57 | 柴田 善臣 | 2:02.3 | クビ | 12-13-13-12 | 35.6 | 498 [0] |
浅見 秀一 | 11 |
1F毎の ラップ |
12.4 – 11.0 – 12.0 – 12.5 – 12.3 – 12.7 – 12.6 – 12.3 – 12.0 – 12.0 |
---|---|
ラップの 累計タイム |
12.4 – 23.4 – 35.4 – 47.9 – 1:00.2 – 1:12.9 – 1:25.5 – 1:37.8 – 1:49.8 – 2:01.8 |
上り | 4F 48.9 – 3F 36.3 |
20世紀最後の皐月賞であった2000年の第60回。単勝3.3倍の1番人気は北九州3歳S(OP)、シンザン記念(GIII)、スプリングS(GII)と3連勝で臨んだダイタクリーヴァ(1997.3.24)。ダイタクヘリオス(1987.4.10)の甥、橋口弘次郎調教師&高橋亮騎手という師弟コンビによる挑戦。単勝3.4倍の2番人気は本稿の主役、エアシャカール。「社台グループ、サンデーサイレンス産駒、武豊」というサンデーサイレンス全盛時の間違いのない組み合わせ。エアデジャヴー(1995.3.27)の半弟は、エアグルーヴ(1993.4.6)の馬主と騎手のコンビでもありました。単勝7.0倍の3番人気はラジオたんぱ杯3歳S(GIII)の勝ち馬であったラガーレグルス(1997.5.2)。サクラチトセオー(1990.5.11)の初年度産駒、Grey Sovereign(1948.3.30)6×3というクロスが印象的でした。
中山芝2000m、曇の稍重馬場、18頭立て。事件はスタートで発生しました。開門し勢い良く出発と思いきや、文字通り立ち往生する馬が。1枠1番のラガーレグルス、立ち上がってしまい発馬出来ず、佐藤哲三騎手は落馬。いきなりのアクシデントにより、レースは17頭により競われることとなりました。馬群を引き連れたのはトウカイポイント(1996.5.18)の半弟パープルエビス(1997.5.8)。入りの3ハロンが35秒4、1000m通過が1分0秒2という平均ペースに持ち込み、コーナー4回の中山芝2000mの3角から4角でもう一段流れを緩ませると、馬群が一気に凝縮。ダイタクリーヴァは終始先行4番手で機を窺っていると、大外をグーンと進出して来る馬が1頭。桃色の帽子に「黄、青一本輪、青袖」の勝負服、黒鹿毛に星1つ、桃色のバンテージを四肢に巻いたエアシャカール。道中は後方3番手に位置していたエアシャカール、勝負所の三分三厘で一気に仕掛けた武豊騎手に応えると、中山芝310mの直線を大外から強襲。内から抜け出しに掛かったダイタクリーヴァ、外から切れ込みながら迫ったエアシャカール。ゴール前100mで見せた脚色からは間違いなく勝ち負けのエアシャカール、改めて映像を見直せば、決勝点前ではユタカさんが追い辛そうにも見えました。
サンデーサイレンス産駒の悪いところが全部集まったような馬だったんです。とにかく真っ直ぐ走ってくれないし、乗りにくいことこの上ない
能力は一級品、重ねて気性の悪さも一級品だったエアシャカール。ともあれ、ダイタクリーヴァとの一騎打ちをタイム差なしの「クビ」だけ振り切ったところが栄光の皐月賞の決勝点。重賞初制覇を皐月賞で飾ったエアシャカール。生産の社台ファームにとっては、社台ファーム千歳時代の第55回のジェニュイン(1992.4.28)以来の皐月賞2勝目。馬主の(株)ラッキーフィールドにとっては、先代の吉原貞敏氏が個人名義で制した第29回のワイルドモア(1966.3.8)以来となる皐月賞優勝。管理される森秀行調教師はクラシック初勝利。そして武騎手はナリタタイシン(1990.6.10)に続く皐月賞2勝目と相成りました。
*
エアシャカールの皐月賞はタイム差なしの「クビ」差の1着だったのですが、実はひと夏越えた菊花賞(GI)もタイム差なしの「クビ」差の1着でした。という訳で、結局手数を増やしてしまうのは私の悪癖なのですが、エアシャカールが制した菊花賞についても記しておきます。
着 順 |
馬 番 |
馬名 | 性齢 | 斤 量 |
騎手 | 走破 時計 |
着差 | 通過 順位 |
上り 3F |
馬体重 [増減] |
調教師 | 人 気 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 15 | エアシャカール | 牡3 | 57 | 武 豊 | 3:04.7 | 8-9-10-7 | 35.7 | 494 [-6] |
森 秀行 | 2 | |
2 | 13 | トーホウシデン | 牡3 | 57 | 田中 勝春 | 3:04.7 | クビ | 6-6-6-4 | 35.9 | 430 [-4] |
田中 清隆 | 3 |
3 | 1 | エリモブライアン | 牡3 | 57 | 藤田 伸二 | 3:05.4 | 4 | 12-12-10-7 | 36.3 | 484 [+14] |
清水 出美 | 6 |
4 | 4 | ケージージェット | 牡3 | 57 | 佐藤 哲三 | 3:05.5 | クビ | 15-15-14-11 | 36.2 | 500 [-4] |
嶋田 功 | 12 |
5 | 6 | アグネスフライト | 牡3 | 57 | 河内 洋 | 3:05.6 | 1/2 | 9-9-6-4 | 36.8 | 460 [-2] |
長浜 博之 | 1 |
1F毎の ラップ |
13.4 – 11.2 – 11.5 – 12.7 – 12.7 – 12.2 – 13.1 – 12.7 – 12.4 – 12.4 – 12.4 – 11.9 – 11.9 – 12.1 – 12.1 |
---|---|
ラップの 累計タイム |
13.4 – 24.6 – 36.1 – 48.8 – 1:01.5 – 1:13.7 – 1:26.8 – 1:39.5 – 1:51.9 – 2:04.3 – 2:16.7 – 2:28.6 – 2:40.5 – 2:52.6 – 3:04.7 |
上り | 4F 48.0 – 3F 36.1 |
20世紀最後の菊花賞であった2000年の第61回。振り返れば、この年から菊花賞が天皇賞・秋(GI)の前週に組まれるようになり、10月の開催となりました。単勝1.9倍の1番人気は東京優駿(GI)でエアシャカールを負かしたアグネスフライト(1997.3.2)。秋初戦の神戸新聞杯(GII)でもエアシャカールに先着しての2着であり、実績最上位からも当然ではありました。単勝2.8倍の2番人気は本稿の主役、エアシャカール。7月に英国遠征を敢行し”キング・ジョージ”(英GI)でMontjeu(1996.4.4)の5着、帰国初戦の神戸新聞杯では1番人気に推されたもののフサイチソニック(1997.3.24)、アグネスフライトに次ぐ3着。武騎手をして「彼の頭の中が見てみたいです」と言わしめて、まったく追えなかった故の結果でした。2頭から離れた単勝10.8倍の3番人気がトーホウシデン(1997.3.26)。プリンシパルS(OP)1着、東京優駿4着、セントライト記念(GII)2着と着実に力を蓄えたブライアンズタイム(1985.5.28)産駒、京都の芝長距離はRoberto(1969.3.16)系で一発を狙うというところでした。
京都芝3000m、晴の良馬場、18頭立て。改めてレース映像を見ると「ユタカさん、やっぱり淀の魔術師やわ」と思わせる騎乗ぶりでした。菊花賞はスタート直後に3角から4角の「淀の坂越え」があるため、ここをいかに上手に乗り切ること出来るかが勝負の第一関門。7枠15番という外枠から素直なスタートを見せたエアシャカール、2ハロン目に入ったところでトーホウシデンを見やる形で4番手まで押し上げると、3角から4角にかけて上手く最内に潜り込んでいました。正面スタンド前の1000m通過が1分1秒5の流れの中、「気楽に行こうよ」とばかりに相棒をなだめられていた武騎手、後続馬が外から前々を臨もうとした中でもじっと我慢。1角では8番手、2角では9番手と中団に控えて、向こう正面では外のアグネスフライトと並走。2000m通過が2分4秒3、ラップにして1分2秒8とそれほど緩まなかった中盤。2回目の3角から4角、アグネスフライトが大外をマクって行った時も「まだよ、まだよ」と3角10番手、4角7番手と虎視眈々。そして直線。内に進路を取ったエアシャカール、ジョウテンブレーヴ(1997.5.10)とホワイトハピネス(1997.4.19)の間1頭分を縫うようにして抜け出すと、最内のラチ沿いを伸びました。結局、内にササッていたようですが、武騎手の右ムチに応じたエアシャカール。最後は馬場中央から鋭脚を見せたトーホウシデンが差し迫りましたが、タイム差なしの「クビ」だけ凌いだところが、京都芝3000m3分4秒7で走破の決勝点。
気難し屋のエアシャカール、その能力は紛うことなく一級品。トサミドリ(1946.5.20)、ダイナナホウシユウ(1951.5.11)、キタノカチドキ(1971.3.27)、ミホシンザン(1982.4.16)、サクラスターオー(1984.5.2)、セイウンスカイ(1995.4.26)に続く、史上7頭目の皐月賞&菊花賞のクラシック二冠を果たしたのでした。
武豊TV!だったでしょうか、武騎手が「勝春くんが上手く乗っていたので、それに付いて行っただけ」というようなことをおっしゃっていたようにも思うのですが、スタートした時から「良い感じに走っている」トーホウシデンをマークされていたのではないかと思います。そしてまた、伊藤雄二調教師は、この菊花賞について「勝春くんは100点の騎乗だった。けれど、ユタカくんは120点の騎乗だった」と評されていたようにも記憶しています。
ともあれ、鞍上の超絶の技量があろうとも、エアシャカールの能力を信じた人に応えた、エアシャカールが本当に素晴らしかった。そうして生産の社台ファームにとっては社台ファーム千歳時代の第57回のダンスインザダーク(1993.6.5)以来の2勝目、馬主の(株)ラッキーフィールドと管理される森調教師には菊花賞初勝利、そして武騎手には第49回のスーパークリーク(1985.5.27)、第57回のダンスインザダークに続く菊花賞最多タイとなる3勝目をプレゼントしたのでした。
*
結果的に菊花賞が最後の勝利となったエアシャカールでしたが、伊達や酔狂でクラシック二冠を果たせるものではありません。欧州遠征を挟みながらでも春と秋にGIを制した現年齢表記3歳時の輝きは、その気性的な個性の強さと共に、私の記憶に強く留まっています。
エアシャカール、黒鹿毛に星1つの「準三冠馬」。20代の折に触れた、忘れがたき名馬の1頭です。
それでは、これから走る馬、人すべてが無事でありますように。
*
[エアシャカール(1997.2.26)の主な競走成績]
- 皐月賞(GI)、菊花賞(GI)
- 東京優駿(GI)、金鯱賞(GII)、産経大阪杯(GII)2回、弥生賞(GII)
- 神戸新聞杯(GII)
通算20戦4勝、2着6回、3着1回。
*
エアシャカールと言えば、東京優駿の7cm差の「ハナ」差2着も惜しかったよな。
ええ。2000年の第67回東京優駿については、6週間後の「アグネスフライト(1997.3.2)-タイム差なしの好勝負を辿る(No. 10)-」の記事で触れるそうです。
ネタバラシも何も無いけれど、そりゃ、そうなるわなぁ。