ラインクラフト(2002.4.4)-福永祐一騎手の引退に寄せて・中編-

Special feature

ラインクラフト 牝 鹿毛 2002.4.4生~2006.8.19没 早来町・ノーザンファーム生産 馬主・大澤 繁昌氏 栗東・瀬戸口 勉厩舎

ラインクラフト(2002.4.4)の4代血統表
エンドスウィープ
鹿毛 1991.5.31
種付け時活性値:0.50【10】
フォーティナイナー
栗毛 1985.5.11
Mr. Prospector
鹿毛 1970.1.28
★Raise a Native 1961.4.18
Gold Digger 1962.5.28
File
栗毛 1976.4.30
Tom Rolfe 1962.4.14
Continue 1958.2.23
Broom Dance
鹿毛 1979.4.10
Dance Spell
鹿毛 1973.3.29
Northern Dancer 1961.5.2.7
Obeah 1965.4.15
Witching Hour
鹿毛 1960.3.31
Thinking Cap 1952
Enchanted Eve 1949
マストビーラヴド
栗毛 1993.6.9
仔受胎時活性値:2.00【8】
サンデーサイレンス
青鹿毛 1986.3.25
種付け時活性値:1.50【6】
★Halo
黒鹿毛 1969.2.7
Hail to Reason 1958.4.18
Cosmah 1953.4.4
Wishing Well
鹿毛 1975.4.12
Understanding 1963.2.17
Mountain Flower 1964.3.23
ダイナシユート
栗毛 1982.5.13
仔受胎時活性値:0.50【10】
ノーザンテースト
栗毛 1971.3.15
種付け時活性値:0.50【10】
Northern Dancer 1961.5.27
Lady Victoria 1962.2.20
シヤダイマイン
黒鹿毛 1973.4.9
仔受胎時活性値:2.00(0.00)【8】
ヒツテイングアウエー
鹿毛 1958.4.9
種付け時活性値:1.50【14】
フアンシミン
芦毛 1967.4.21
仔受胎時活性値:1.25【5】

<5代血統表内のクロス:Northern Dancer4×4>

ラインクラフト(2002.4.4)の0の理論的総括
母父 祖母父 曾祖母父
エンドスウィープ
(Mr. Prospector系)
サンデーサイレンス
(Halo系)
ノーザンテースト
(Northern Dancer系)
ヒツテイングアウエー
(Tourbillon系)
形相の遺伝 料の遺伝 牝系 母の何番仔?
サンデーサイレンス
(Mountain Flower)
5.75 or 3.75
(【8】+【10】+【8】+【5】)
叔父アドマイヤマックス
(No. 9-f フアンシミン系)
4番仔
(3連産目)

*

2005年の第65回桜花賞(GI。阪神芝1600m)の結果(上位5頭)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 通過
順位
上り
3F
馬体重
[増減]
調教師
1 17 ラインクラフト 牝3 55 福永 祐一 1:33.5 3-4-4 34.7 454
[-6]
瀬戸口 勉 2
2 7 シーザリオ 牝3 55 吉田 稔 1:33.5 アタマ 6-11-10 34.4 454
[-2]
角居 勝彦 1
3 9 デアリングハート 牝3 55 M.デムーロ 1:33.6 クビ 3-2-2 35.0 418
[+2]
藤原 英昭 10
4 15 エアメサイア 牝3 55 武 豊 1:33.9 1 3/4 12-11-10 34.7 462
[+4]
伊藤 雄二 3
5 6 ダンツクインビー 牝3 55 小牧 太 1:34.0 3/4 12-10-7 35.0 474
[-6]
石坂 正 14
2005年の第65回桜花賞(GI。阪神芝1600m)のラップタイム
1F毎の
ラップ
12.2 – 10.4 – 11.2 – 12.3 – 11.9 – 12.0 – 11.5 – 12.0
ラップの
累計タイム
12.2 – 22.6 – 33.8 – 46.1 – 58.0 – 1:10.0 – 1:21.5 – 1:33.5
上り 4F 47.4 – 3F 35.5

福永祐一騎手は「我が身が2つあれば」と思われていたのではないかと思います。かたやラインクラフト、所属であった北橋修二厩舎と共に主戦格を務められていた瀬戸口勉厩舎の素質馬。こなたシーザリオ(2002.3.31)、福永騎手曰く僕が乗った中での最強牝馬。それも群を抜いていたという、後の”Japanese superstar”。

シーザリオ(2002.3.31)
シーザリオ(Cesario) 牝 青毛 2002.3.31生~2021.2.27没 早来・ノーザンファーム生産 馬主・(有)キャロットファーム 栗東・角居勝彦厩舎

天秤にかけられた結果、先約を優先された福永騎手。今も昔も8枠からの発走となると難しい阪神芝1600m、好発を決めると先行策から勝ちに行く競馬を見せたラインクラフトと福永騎手。直線、外から当然のように詰め寄ったシーザリオ、内で前粘りを見せたデアリングハート(2002.3.9)との「アタマ」「クビ」の勝負を封じたところが決勝点。その勝ち時計1分33秒5は、前年にダンスインザムード(2001.4.10)が刻んだ1分33秒6をコンマ1秒塗り替える桜花賞レコード。桃色の帽子に「桃、緑星散、袖緑二本輪」の勝負服を背にした鹿毛、その稲妻のような流星も印象的なラインクラフト。福永騎手にプリモディーネ(1996.4.5)以来、6年ぶり2度目の桜花賞制覇を贈りました。

プリモディーネ(1996.4.5)-福永祐一騎手の引退に寄せて・前編-
プリモディーネ 牝 鹿毛 1996.4.5生 門別町・サンシヤイン牧場生産 馬主・伊達 秀和氏 栗東・西橋 豊治厩舎

ラインクラフトの桜花賞では「同一牝系の連動する活躍」を思いました。2週間前に行われた高松宮記念(GI)でラインクラフトの叔父アドマイヤマックス(1998.4.10)が、日本の牝系祖にフアンシミンを持つ馬として初めてのGI勝利を収めたと思ったら、姪が桜花賞を勝ったのです。そうしてラインクラフトが桜花賞を制した日付を見れば2005年4月10日。アドマイヤマックス満6歳の誕生日、姪がGI勝利で祝ってくれました。

アドマイヤマックス(1999.4.10)
アドマイヤマックス 牡 鹿毛 1999.4.10生~2023.2.12没 早来町・ノーザンファーム生産 馬主・近藤 利一氏 栗東・橋田 満厩舎

またラインクラフトは母父にサンデーサイレンスを持つ馬として初めてJRA・GIを勝った馬でもあります。直父系の勢いが有り過ぎて母父としてGI馬を送り出したのは、サンデーサイレンスが存命であれば19歳時のことでした。ちなみにラインクラフトの祖母父であるノーザンテーストが母父としてGI馬を送り出したのは15歳時、1986年の皐月賞(GI)を制したダイナコスモス(1983.3.25)。ラインクラフトと同じ2002年生まれ世代にしてサンデーサイレンスの最高傑作であるディープインパクト(2002.3.25)が母父としてGI馬を送り出したのも15歳時、2017年の菊花賞(GI)を制したキセキ(2014.5.13)

*

2005年の第10回NHKマイルカップ(GI。東京芝1600m)の結果(上位5頭)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 通過
順位
上り
3F
馬体重
[増減]
調教師
1 12 ラインクラフト 牝3 55 福永 祐一 1:33.6 4-4 33.6 454
[0]
瀬戸口 勉 2
2 13 デアリングハート 牝3 55 後藤 浩輝 1:33.9 1 3/4 6-4 33.8 422
[+4]
藤原 英昭 10
3 4 アイルラヴァゲイン 牡3 57 横山 典弘 1:34.0 クビ 7-7 33.7 498
[-6]
手塚 貴久 4
4 2 ペールギュント 牡3 57 武 豊 1:34.3 2 11-11 33.7 498
[-2]
橋口 弘次郎 1
5 3 セイウンニムカウ 牡3 57 安藤 勝己 1:34.5 1 1/4 11-11 33.9 490
[0]
上原 博之 6
2005年の第10回NHKマイルカップ(GI。東京芝1600m)のラップタイム
1F毎の
ラップ
12.5 – 11.0 – 12.0 – 11.9 – 12.0 – 11.3 – 11.3 – 11.6
ラップの
累計タイム
12.5 – 23.5 – 35.5 – 47.4 – 59.4 – 1:10.7 – 1:22.0 – 1:33.6
上り 4F 46.2 – 3F 34.2

桜冠を蹄中に収めたラインクラフト、その次走は東京芝2400mではなく東京芝1600mの舞台でした。桜花賞馬は距離が伸びた優駿牝馬(GI)でも頑張る姿を多く見ますが、ラインクラフトの場合は、距離適性と共に相手関係と福永騎手への配慮もあったのでしょう。そうして果たされたのは、NHKマイルカップ10回目にして初めてとなるクラシック勝ち馬による制覇。ラインクラフト、桜花賞で好勝負を演じた相手であるデアリングハートに1と4分の3馬身差を着けての快勝を以てGI2連勝を成したのでした。サスガは桜花賞馬。

*

「冠名+力(独)」という馬名意味のラインクラフト。マイルGI2勝にして重賞を都合5勝の本当の実力馬でしたが、その別れは4歳夏に不意にやって来ました。

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ラインクラフトが逝った3日前には1993年の二冠牝馬ベガ(1990.3.8)も本当の一等星になっていて、「競馬の神様、そない立て続けに桜花賞馬をそばに呼び寄せなくてもいいやんか……」と、がく然としたことを思い出します。

ラインクラフトが桜花賞で負かしたシーザリオは繁殖牝馬としてもエピファネイア(2010.2.11)リオンディーズ(2013.1.29)サートゥルナーリア(2016.3.21)と3頭のGI馬を送り込む大繁殖牝馬となり、デアリングハートも孫に三冠牝馬デアリングタクト(2017.4.15)を輩出しました。そしてまた桜花賞では4着に破り、秋華賞(GI)ではクビだけ先んじられたエアメサイア(2002.2.4)エアスピネル(2013.2.10)、エアウィンザー(2014.2.15)と重賞勝ち馬2頭の母となりました。こうして3歳GIでしのぎを削った同期生たちの、母としての活躍を思うと、ラインクラフトの仔も本当に見てみたかった。

ラインクラフト、シーザリオにレースで先着した唯1頭の馬。いつまでも忘れ難い名牝の1頭です。

  

それでは、これから走る馬、人すべてが無事でありますように。

*

[ラインクラフト(2002.4.4)の主な競走成績]

  1. 桜花賞(GI)、NHKマイルカップ(GI)、阪神牝馬S(GII)、フィリーズレビュー(GII)、ファンタジーS(GIII)
  2. 秋華賞(GI)、高松宮記念(GI)、ローズS(GII)
  3. マイルチャンピオンシップ(GI)、阪神ジュベナイルフィリーズ(GI)

通算13戦6勝、2着3回、3着2回。

ラインクラフト|名馬メモリアル|競馬情報ならJRA-VAN
競馬史に偉大な足跡を残したラインクラフトを紹介します。
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