思い出のGI1勝馬を辿る(其の零)-レオダーバン(1988.4.25)&イブキマイカグラ(1988.2.24)-

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レオダーバン 牡 鹿毛 1988.4.25生 新冠・早田牧場新冠支場生産 馬主・田中竜雨氏 美浦・奥平真治厩舎

レオダーバン(1988.4.25)の4代血統表
マルゼンスキー
鹿毛 1974.5.19
種付け時活性値:1.25
Nijinsky
鹿毛 1967.2.21
Northern Dancer
鹿毛 1961.5.27
Nearctic 1954.2.11
Natalma 1957.3.26
Flaming Page
鹿毛 1959.4.24
Bull Page 1947
Flaring Top 1947
シル
鹿毛 1970.4.22
Buckpasser
鹿毛 1963.4.28
Tom Fool 1949.3.31
Busanda 1947
Quill
栗毛 1956.2.24
Princequillo 1940
Quick Touch 1946
シルテイーク
鹿毛 1981.3.26
仔受胎時活性値:1.50
ダンサーズイメージ
芦毛 1965.4.10
種付け時活性値:1.75
Native Dancer
芦毛 1950.3.27
Polynesian 1942.3.8
Geisha 1943
Noors Image
鹿毛 1953.5.4
Noor 1945
Little Sphinx 1943
ヤマトマサル
栗毛 1965.5.22
仔受胎時活性値:1.75
コダマ
栗毛 1957.4.15
種付け時活性値:1.75
ブツフラー 1952
シラオキ 1946.4.7
ミスミハル
栗毛 1951.3.18
仔受胎時活性値:1.25
ミハルオー
栗毛 1945.4.30
種付け時活性値:1.25
マイラブ
鹿毛 1946.3.31
仔受胎時活性値:1.00

<5代血統表内のクロス:Native Dancer3×5、Menow5×5(父方)>

レオダーバン(1988.4.25)の0の理論的総括
母父 祖母父 曾祖母父
マルゼンスキー
(Nijinsky系)
ダンサーズイメージ
(Native Dancer系)
コダマ
(Prince Chevalier系)
ミハルオー
(Man o’ War系)
形相の遺伝 料の遺伝 牝系 母の何番仔?
ダンサーズイメージ 5.50 伯母ハセシノブ
(No. 12 ビユーチフルドリーマー系)
3番仔
(3連産目)

*

1991年の第52回菊花賞(GI。京都芝3000m)の結果(上位5頭。馬齢は現年齢表記に合わせる)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 上り
4F
馬体重
[前走比]
調教師
1 18 レオダーバン 牡3 57 岡部幸雄 3:09.5 46.5 494
[+2]
奥平真治 3
2 8 イブキマイカグラ 牡3 57 南井克巳 3:09.7 1.1/2 46.4 448
[+2]
中尾正 1
3 10 フジヤマケンザン 牡3 57 小島貞博 3:09.7 ハナ 46.9 530
[+2]
戸山為夫 8
4 5 ナイスネイチャ 牡3 57 松永昌博 3:09.8 1/2 46.8 502
[+8]
松永善晴 2
5 9 シャコーグレイド 牡3 57 柴田善臣 3:10.5 4 47.6 468
[+8]
矢野照正 5

1991年の第52回菊花賞。春のクラシック二冠馬トウカイテイオー(1988.4.20)が不在のこの一戦。制したのは、そのトウカイテイオーが悠々と勝利を収めた第58回東京優駿(GI)で2着だったレオダーバン。レオダーバン、「母父ダンサーズイメージ」「燃えやすい気性」「最後の単枠指定馬となったセントライト記念(GII)で1番人気3着」などにより不安もささやかれ、菊花賞では人気を下げていました。けれど、スローペースによる瞬発力勝負の展開も味方につけ、上がり3ハロン推定34秒9の鋭脚を繰り出し、栄誉ある菊花賞勝ち馬としてその名を歴史に刻みました。

見れば、この第52回菊花賞の上位5頭は愛すべきキャラクターたちが揃っていますね。1988年生まれ世代の牡馬クラシック戦線を走った「内国産馬No.2」とも言うべき馬どうしが1着、2着。そして3着に後の国際GII勝ち馬フジヤマケンザン(1988.4.17)、4着に言わずもがなのナイスネイチャ(1988.4.16)、5着がトウカイテイオーの引退式の日に3年10ヶ月ぶりの勝利を遂げた皐月賞(GI)2着馬シャコーグレイド(1988.3.27)。

*

レオダーバンの血統について、0の理論的に着目するべきポイントは3つあります。

1つ目は「Native Dancer3×5の有数値クロスがある」ということです。Native Dancerの直系5代父Polymelus(1902)はグリーン0による0化がなされていますが、直系4代父Phalaris(1913.5.16)はグリーン0による0化がなされていません。クロスによる0化、すなわちブルー0は直父系4代以内にグリーン0、あるいはオレンジ0がある際に有効であり、0の理論的にはNative Dancerのクロスは弊害のあるクロスとして判断されます。

2つ目は「父マルゼンスキーの種付け総数が720頭を越える年に、母シルティークに対する種付けがなされた」ということです。マルゼンスキーは1978年に種牡馬として初供用され、1978年61頭、1979年73頭、1980年70頭、1981年77頭、1982年77頭、1983年75頭、1984年77頭、1985年78頭、1986年68頭、1987年68頭、以後続く……と種付けをこなしました。初年度(1978年)から10年度(1987年)までの種付け総数は「724」。レオダーバンは1988年生まれですから、父の10年度に種付けされて生産された産駒です。

ある1頭の種牡馬の産駒が次々にレースを制すると、その種牡馬には人気が集中する。だが、種付け頭数を増やし、数年後、出馬表に同じ種牡馬の名前が溢れ返るようになると、ぱったりとその種牡馬の仔はビッグレースを勝てなくなる。(中略)

720頭を超える頭数の種付けを済ますと、その産駒(牡馬)の闘争本能は著しく減少し、競走能力が明らかに低下する。これは、それ以上同じ血族を増やす必要が失われるからである。(中略)

「アメリカでは誰でも言うが、何でも野生馬のボスの種付け総数だって話さ。ほんとかどうかは知らないけどね」

-KKベストセラーズ、中島国治著「血とコンプレックス」、P119~P121より引用-

レオダーバンは、種牡馬マルゼンスキーにとって、最後のGI勝ち産駒でした。

3つ目は最優性先祖と判断した母父ダンサーズイメージについてです。レオダーバンの体型や気性から察するに、形相はダンサーズイメージに違いないと考えています。栗毛牝馬のヤマトマサルとの交配時、ダンサーズイメージの活性値は15歳の1.75ポイントで行われ、仔のシルティークは鹿毛に出ました。芦毛遺伝子が劣性に働いたものの、ダンサーズイメージの持つ原毛色である鹿毛が発現したと判断しています。ダンサーズイメージは芦毛馬でしたが、言うならば「隠れホモ鹿毛」の種牡馬であり、彼の芦毛以外の産駒はすべて鹿毛系の毛色でした。

*

1990年代に隆盛を極めた早田牧場にGI初勝利をプレゼントしたレオダーバン。後に続いたビワハヤヒデ(1990.3.10)&ナリタブライアン(1991.5.3)兄弟、マーベラスクラウン(1990.3.19)マーベラスサンデー(1992.5.31)シルクジャスティス(1994.3.18)シルクプリマドンナ(1997.4.22)等は、私が最も競馬を見ていた時代を彩ってくれた、忘れがたき名馬たちです。そんな早田牧場の生産馬として、初めてのGI勝ち馬となったレオダーバン。栄光の八大競走優勝馬でありながら、その消息が杳として知れないことは、悲しく切ない出来事です。

[レオダーバン(1988.4.25)の主な競走成績]

  1. 菊花賞(GI)
  2. 東京優駿(GI)
  3. セントライト記念(GII)

通算9戦4勝、2着1回、3着1回。

*

イブキマイカグラ 牡 栗毛 1988.2.24生~2009.6.24没 千歳・社台フアーム生産 馬主・(有)伊吹 栗東・中尾正厩舎

イブキマイカグラ(1988.2.24)の4代血統表

リアルシヤダイ
黒鹿毛 1979.5.27
種付け時活性値:0.00
Roberto
鹿毛 1969.3.16
Hail to Reason
黒鹿毛 1958.4.18
Turn-to 1951
Nothirdchance 1948
Bramalea
黒鹿毛 1959.4.12
Nashua 1952.4.14
Rarelea 1949
Desert Vixen
黒鹿毛 1970.4.19
In Reality
鹿毛 1964.3.1
Intentionally 1956.4.2
My Dear Girl 1957.2.17
Desert Trial
栗毛 1963.5.14
Moslem Chief 1957.3.24
Scotch Verdict 1960.5.12
ダイナクラシツク
鹿毛 1982.5.12
仔受胎時活性値:1.25
ノーザンテースト
栗毛 1971.3.15
種付け時活性値:0.50
Northern Dancer
鹿毛 1961.5.27
Nearctic 1954.2.11
Natalma 1957.3.26
Lady Victoria
黒鹿毛 1962.2.20
Victoria Park 1957.5.10
Lady Angela 1944
クリアアンバー
黒鹿毛 1967.5.8
仔受胎時活性値:1.50
★Ambiopoise
鹿毛 1958.5.6
種付け時活性値:0.00
Ambiorix 1946
Bull Poise 1948
One Clear Call
鹿毛 1960.5.21
仔受胎時活性値:1.50
Gallant Man
鹿毛 1954.3.20
種付け時活性値:1.25
Europa
鹿毛 1949
仔受胎時活性値:0.50

<5代血統表内のクロス:Lady Angela(♀)4×5(母方)、Bull Lea5×5×5>

イブキマイカグラ(1988.2.24)の0の理論的総括
母父 祖母父 曾祖母父
リアルシヤダイ
(Roberto系)
ノーザンテースト
(Northern Dancer系)
Ambiopoise
(Tourbillon系)
Gallant Man
(Bois Roussel系)
形相の遺伝 料の遺伝 牝系 母の何番仔?
Gallant Man
(Majideh)
4.75 伯父アンバーシヤダイ
(No. 4-m クリアアンバー系)
初仔
(流産後)

*

1990年の第42回阪神3歳S(GI。阪神芝1600m)の結果(上位5頭。馬齢は現年齢表記に合わせる)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 上り
4F
馬体重
[前走比]
調教師
1 2 イブキマイカグラ 牡2 54 南井克巳 1:34.4 レコード 46.6 444
[-2]
中尾正 2
2 6 ニホンピロアンデス 牡2 54 岸滋彦 1:34.6 1.1/4 47.5 456
[-8]
田中耕太郎 5
3 3 ミルフォードスルー 牝2 53 武豊 1:34.8 1.1/4 48.3 506
[-6]
田中耕太郎 1
4 1 エミノディクタス 牝2 53 丸山勝秀 1:34.9 3/4 46.8 448
[-2]
福島信晴 6
5 5 ダンディアンバー 牡2 54 松永昌博 1:35.4 3 48.5 482
[-4]
福島信晴 10

1990年の第42回阪神3歳S。翌1991年からは牝馬限定の阪神3歳牝馬S(現阪神ジュベナイルフィリーズ)となったため、最後の阪神3歳Sの勝ち馬となったイブキマイカグラ。逃げたミルフォードスルー(1988.3.18)、それを外から追ったニホンピロアンデス(1988.4.16)という田中耕太郎厩舎の2頭の争いを、最内から鋭く交わし切りました。イブキマイカグラ、リアルシヤダイの牡馬産駒のGI初勝利は、そのまま中尾正調教師のGI初勝利でもありました。

1990年の東西の現年齢表記2歳チャンピオン決定戦は、共にレコードタイムで決着しました。東の第42回朝日杯3歳S(現朝日杯フューチュリティS、GI)ではリンドシェーバー(1988.3.3)が1分34秒0のレコード勝ち、西の第42回阪神3歳Sではイブキマイカグラが1分34秒4のこれまたレコード勝ち。この東西のチャンピオン2騎は翌1991年の弥生賞(GII)で対戦することになりますが、弥生賞ではイブキマイカグラに軍配が上がりました。

*

競走馬としてはGI1勝に終わったイブキマイカグラでしたけれど、その血統背景から中島国治氏の種牡馬としての見立ては高いものでした。

☆(父)イブキマイカグラ(1988) 6歳のため1.5

有数値の先祖が少なく(4/64)、仕掛けのタイプ(繁殖牝馬の質にはあまりとらわれないもの)である。

父はリアルシヤダイ(0の交配)。母はアンバーシャダイの妹ダイナクラシック、阪神3歳SGI、弥生賞GII、NHK杯GIIなど5勝。特に0のNorthern Dancerのクロスがあれば大物の出現もある。

-KKベストセラーズ、「競馬最強の法則」1997年8月号、P128より引用-

父リアルシヤダイの生年月日が1979年5月27日、仔イブキマイカグラの生年月日が1988年2月24日。太陽のサイクルにおける活性値の推移を考えれば、リアルシヤダイの種付け時の活性値は「2.00」ではないかと思うのですが、0の交配という判断^^;

余談となりますが、リアルシヤダイと同じように生まれ日が5月下旬の種牡馬であるブライアンズタイム(1985.5.28)の産駒がクラシックで大活躍した1997年、中島氏はサニーブライアン(1994.4.23)やシルクジャスティス、マイネルマックス(1994.4.13)等をブライアンズタイムの0遺伝を受けた産駒と判断されていました。

活性値を厳格に見極めようとされる方々にはお叱りを受けるところですけれど、上記の背景もあり、私は機械的にミニモの遺伝の判定をしております。あくまで趣味の範囲で開示しているWEBサイトですので、ご容赦いただければと思います。

*

閑話休題。イブキマイカグラ、私は「伊吹舞神楽」という和風味漂う馬名が大好きでした。アンバーシャダイ(1977.3.10)の甥、「赤、黄二本輪、黄袖、赤二本輪」の勝負服を乗せた栗毛の小柄な馬体、そして白いメンコを着けた額に流れる大作。追い込み一辺倒の不器用さも愛された、最後の阪神3歳S勝ち馬でした。

[イブキマイカグラ(1988.2.24)の主な競走成績]

  1. 阪神3歳S(GI)、NHK杯(GII)、弥生賞(GII)
  2. 菊花賞(GI)、京都新聞杯(GII)
  3. 天皇賞・春(GI)、デイリー杯3歳S(GII)

通算14戦5勝、2着3回、3着2回。

 

それでは、これから走る馬、人すべてが無事でありますように。

*

マイシンザン
マイシンザン

俺にとっては、レオダーバンさんはCBスタッドに繋養された種牡馬の先輩、イブキマイカグラさんはNHK杯勝ち馬の先輩、でもあるな。

ワイルドブラスター
ワイルドブラスター

僕にとっては、レオダーバンさんは故郷を同じくする先輩です。兄さんは、レオダーバンさんとCBスタッドで一緒に繋養された時期もありましたものね…。

マイシンザン
マイシンザン

そうやな…。種牡馬引退後、終の棲家が見つかり、そこで暮らせた俺らは幸せ者やった……。

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