JRA賞年度代表馬を辿る(其の拾)-サクラローレル(1991.5.8)-

Horse of the Year

サクラローレル 牡 栃栗毛 1991.5.8生~2020.1.24没 静内・谷岡牧場生産 馬主・(株)さくらコマース 美浦・境勝太郎厩舎→美浦・小島太厩舎

サクラローレル(1991.5.8)の4代血統表
Rainbow Quest
鹿毛 1981.5.15
種付け時活性値:0.25【9】
Blushing Groom
栗毛 1974.4.8
Red God
栗毛 1954.2.15
Nasrullah 1940.3.2
Spring Run 1948
Runaway Bride
鹿毛 1962
Wild Risk 1940
Aimee 1957
I Will Follow
鹿毛 1975.4.29
▲Herbager
鹿毛 1956.4.19
Vandale 1943
Flagette 1951
Where You Lead
栗毛 1970.4.23
★Raise a Native 1961.4.18
Noblesse 1960
ローラローラ
栗毛 1985.3.23
仔受胎時活性値:1.25【5】
Saint Cyrien
鹿毛 1980.4.22
種付け時活性値:1.00【4】
Luthier
黒鹿毛 1965.3.22
Klairon 1952.3.31
Flute Enchantee 1950
Sevres
鹿毛 1974.2.9
Riverman 1969.3.22
Saratoga 1966.2.12
Bold Lady
栗毛 1974.2.27
仔受胎時活性値:0.50【10】
ボールドラツド(USA)
栗毛 1962.4.23
種付け時活性値:0.75【11】
Bold Ruler 1954.4.6
Misty Morn 1952
Tredam
栗毛 1966
仔受胎時活性値:1.75【7】
High Treason
栗毛 1951
種付け時活性値:1.50【14】
Damasi
栗毛 1953
仔受胎時活性値:1.00【12】

<5代血統表内のクロス:Nasrullah4×5>

サクラローレル(1991.5.8)の0の理論的総括
母父 祖母父 曾祖母父
Rainbow Quest
(Blushing Groom系)
Saint Cyrien
(Luthier系)
ボールドラツド(USA)
(Bold Ruler系)
High Treason
(Fairway系)
形相の遺伝 料の遺伝 牝系 母の何番仔?
High Treason
(Eastern Grandeur)
4.50
(【5】+【10】+【7】+【12】)
従弟タイムパラドックス
(No. 14)
2番仔
(2連産目)

*

1996年の第113回天皇賞・春(GI。京都芝3200m)の結果(上位5頭。馬齢は現年齢表記に合わせる)


馬名 性齢 騎手 走破
時計
着差 調教師
1 1 サクラローレル 牡5 横山 典弘 3:17.8 境 勝太郎 3
2 4 ナリタブライアン 牡5 南井 克巳 3:18.2 2・1/2 大久保 正陽 1
3 10 ホッカイルソー 牡4 蛯名 正義 3:18.5 1・3/4 田中 清隆 4
4 16 ハギノリアルキング 牡6 藤田 伸二 3:18.8 2 小林 稔 9
5 7 マヤノトップガン 牡4 田原 成貴 3:18.8 ハナ 坂口 正大 2
1996年の第113回天皇賞・春(GI。京都芝3200m)のラップタイム
1F毎の
ラップ
12.7 – 12.6 – 11.9 – 11.8 – 12.7 –
12.3 – 11.9 – 12.9 – 13.5 – 14.2 –
12.6 – 11.8 – 11.8 – 11.8 – 11.6 –
11.7
ラップの
累計タイム
12.7 – 25.3 – 37.2 – 49.0 – 1:01.7 –
1:14.0 – 1:25.9 – 1:38.8 – 1:52.3 – 2:06.5 –
2:19.1 – 2:30.9 – 2:42.7 – 2:54.5 – 3:06.1 –
3:17.8
上り 4F 46.9 – 3F 35.1

p> 1996年の第113回天皇賞・春。前哨戦の阪神大賞典(GII)で一騎討ちを演じたナリタブライアン(1991.5.3)マヤノトップガン(1992.3.24)に人気が集まりましたが、この2頭に「待った」をかけたのは東の大器、サクラローレルでした。前走は自身1年1ヶ月の休養明けとなる中山記念(GII)でしたが、単勝9番人気をはね返しての快勝劇でした。勝ち運に乗っての第113回天皇賞・春、サクラローレルにとっては、GI初挑戦でした。レースの道中、集団後方に構えていたサクラローレルと横山典弘騎手。人気両頭が直線で先に抜け出した所を、外から強襲しました。栃栗毛の馬体が、淀の芝の上を力強く跳ねて行きました。ゴール板を先頭で駆け抜けた時には、ナリタブライアンに2馬身半の差を着けていました。ナリタブライアンにとっては、遅れてやって来た同期の桜。サクラローレル、ただただ、圧勝でした。

*

1996年の第41回有馬記念(GI。中山芝2500m)の結果(上位5頭。馬齢は現年齢表記に合わせる)


馬名 性齢 騎手 走破
時計
着差 調教師
1 6 サクラローレル 牡5 横山 典弘 2:33.8 境 勝太郎 1
2 11 マーベラスサンデー 牡4 武 豊 2:34.2 2・1/2 大沢 真 3
3 4 マイネルブリッジ 牡4 坂本 勝美 2:34.3 1/2 伊藤 正徳 14
4 8 ロイヤルタッチ 牡3 岡部 幸雄 2:35.0 4 伊藤 雄二 6
5 5 ヒシアマゾン 牝5 河内 洋 2:35.0 クビ 中野 隆良 5
1996年の第41回有馬記念(GI。中山芝2500m)のラップタイム
1F毎の
ラップ
7.2 – 11.4 – 12.6 – 11.6 – 12.2 – 13.2 – 12.6 – 12.3 – 11.6 – 12.3 – 12.6 – 12.5 – 11.7
ラップの
累計タイム
7.2 – 18.6 – 31.2 – 42.8 – 55.0 – 1:08.2 – 1:20.8 – 1:33.1 – 1:44.7 – 1:57.0 – 2:09.6 – 2:22.1 – 2:33.8
上り 4F49.1 – 3F 36.8

1996年の第41回有馬記念。記録を辿れば「875億円」という、1レースにおける勝馬投票券の投票金額世界レコードの一戦でした。レースは、当時の中長距離の上級重賞ではおなじみだったカネツクロス(1991.3.18)の先導により始まりました。そして2番手にマヤノトップガン、3番手にファビラスラフイン(1993.4.13)、4番手にマーベラスサンデー(1992.5.31)と続きました。上位人気馬が、サクラローレルより前の位置で競馬をしようとしていました。サクラローレルは、それらの馬を見る形で、悠然と、中団6~7番手の位置にいました。

カネツクロスの作り出した流れは、力のいる洋芝の馬場にしてはよどみない、平均ペース。レースはほぼ一団の構えで淡々と進み、残り1000mを切った付近から、動き始めました。3角。いったん5番手並びに位置を下げていたマーベラスサンデーが、馬群の外側の方で「すっ」と動きました。武豊騎手が、少しだけ押しながら、3番手まで順位を上げました。それを見て、サクラローレルも徐々に進出。横山典弘騎手が追い加減に馬群前方へ取り付こうとしました。前を見ると、マヤノトップガンは馬なりで2番手を楽走していました。4角。カネツクロスの逃げを先頭に、手応え良くマヤノトップガン、外を仕掛け気味にマーベラスサンデー、その後ろ4番手にサクラローレルがいました。

直線。あれ程良い感じで進んでいたマヤノトップガンに、思うような伸びはありません。力のいる洋芝に脚を取られるような形で、追い比べに遅れを取りました。その代わり、外からマーベラスサンデーが必死の逃げ込み態勢に入ろうとしています。中山の芝状態を考えて先に仕掛けた武豊騎手の作戦は、成功したかに思えました。しかし、もうひとつ外から桃色の勝負服に桃色のバンテージ、目立ついでたちのサクラローレルが、あっさりと、ほんとにあっさりと抜き去りました。中山の急坂を迎えたにも関わらず、推進力豊かに四肢は回転していました。前脚は高く上がり、それが大地を蹴る毎に、後続との差を引き離しました。ゴールした瞬間には、マーベラスサンデーとは2馬身半の差が着いていました。サクラローレル、全くの完勝でした。

サクラローレル、栃栗毛が暮れの中山の芝に映え、グランプリ史上初めて、サクラを冠に戴く馬名が勝ち馬として名前に刻まれました。

*

サクラローレルという馬は、1996年の年度代表馬という栄誉を蹄中に収めた馬であるにも関わらず、全条件戦を勝ち上がった珍しい馬でした。脚元の不安と闘いながら、一歩一歩、階段を上って行ったのでした。

私は、2度、サクラローレルを目の前で見ています。1度目は、1994年11月20日。私が初めて競馬場に行った日。淀でノースフライト(1990.4.12)が第11回マイルチャンピオンシップ(GI)を制した日の第7レース、900万条件戦の比良山特別に出走して勝利を収めたのが、小島太騎手騎乗のサクラローレルでした。その時はサクラバクシンオー(1989.4.14)の帯同馬でした。2度目は、1996年4月21日。そう、ナリタブライアンを豪快に差し切った上述の第113回天皇賞・春。横山典弘騎手騎乗の満5歳馬は、跳ねるようにして、馬場の真ん中を割って行きました。目を閉じれば、緑の芝と桃色の勝負服と栃栗毛の美しさが、私の脳裏に鮮やかに蘇ります。

サクラローレル。そんな記憶もあいまって、忘れられない名馬の1頭ですね。

  

それでは、これから走る馬、人すべてに幸多からんことを。

*

[サクラローレル(1991.5.8)の主な競走成績]

  1. 有馬記念(GI)、天皇賞・春(GI)、オールカマー(GII)、中山記念(GII)、金杯(GIII)
  2. 天皇賞・春(GI)、目黒記念(GII)
  3. 天皇賞・秋(GI)、青葉賞(GIII)

通算22戦9勝、2着5回、3着4回。

#2023年02月09日(木)記事改め。

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