JRA賞年度代表馬を辿る(其の拾伍)-ジャングルポケット(1998.5.7)-

Horse of the Year

ジャングルポケット 牡 鹿毛 1998.5.7生 早来・ノーザンファーム生産 馬主・齊藤四方司氏→吉田勝己氏 栗東・渡辺栄厩舎

ジャングルポケット(1998.5.7)の4代血統表
トニービン
鹿毛 1983.4.7
種付け時活性値:1.50【14】
カンパラ
黒鹿毛 1976.2.19
Kalamoun
芦毛 1970.4.30
ゼダーン 1965
Khairunissa 1960
State Pension
鹿毛 1967
オンリーフォアライフ 1960
Lorelei 1950
Severn Bridge
栗毛 1965
Hornbeam
栗毛 1953
Hyperion 1930.4.18
Thicket 1947
Priddy Fair
鹿毛 1956
Preciptic 1942
Campanette 1948
ダンスチャーマー
黒鹿毛 1990.4.18
仔受胎時活性値:1.75【7】
Nureyev
鹿毛 1977.5.2
種付け時活性値:1.00【12】
Northern Dancer
鹿毛 1961.5.27
Nearctic 1954.2.11
Natalma 1957.3.26
Special
鹿毛 1969.3.28
Forli 1963.8.10
Thong 1964.4.23
Skillful Joy
栗毛 1979.4.8
仔受胎時活性値:0.50【10】
Nodouble(USA)
栗毛 1965.3.4
種付け時活性値:1.25【13】
Noholme(AUS) 1956.10.6
Abla-Jay 1955.4.3
Skillful Miss
鹿毛 1974.1.23
仔受胎時活性値:1.00【4】
Daryl’s Joy(NZ)
青鹿毛 1966.9.1
種付け時活性値:1.625【6.5】
Poliniss
鹿毛 1961.4.8
仔受胎時活性値:1.00【12】

<5代血統表内のクロス:なし>

ジャングルポケット(1998.5.7)の0の理論的総括
母父 祖母父 曾祖母父
トニービン
(ゼダーン系)
Nureyev
(Northern Dancer系)
Nodouble
(Hyperion系)
Daryl’s Joy
(Hyperion系)
形相の遺伝 料の遺伝 牝系 母の何番仔?
Daryl’s Joy
(ダンスチャーマー)
4.25 祖母が米GII勝ち馬
(No. 11-g)
4番仔
(4連産目)

*

2000年9月2日の新馬戦(札幌芝1800m)の結果(上位5頭。馬齢は現年齢表記に合わせる)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 上り
3F
馬体重
[前走比]
調教師
1 6 ジャングルポケット 牡2 53 千田輝彦 1:52.0 35.9 456
[0]
渡辺栄 5
2 5 タガノテイオー 牡2 53 藤田伸二 1:52.1 クビ 35.8 436
[0]
松田博資 1
3 3 ダイイチダンヒル 牡2 53 四位洋文 1:52.2 3/4 36.2 448
[0]
伊藤雄二 4
4 2 ドラマチックローズ 牝2 53 松永幹夫 1:53.5 8 37.2 462
[0]
伊藤圭三 3
5 1 メジロベイリー 牡2 53 武幸四郎 1:53.8 1.3/4 37.8 480
[0]
武邦彦 2

今になって振り返れば、出走8頭全頭がJRAで勝ち上がるというハイレベルな一戦。1番人気のタガノテイオー(1998.4.10)をクビだけ競り落としたのは、5番人気のジャングルポケット。負かした相手が強いと、その勝利が際立ちます。後にタガノテイオーは第5回東京スポーツ杯3歳S(現東京スポーツ杯2歳S、GIII)勝ち、ダイイチダンヒル(1998.4.25)は若葉S(OP)勝ち、メジロベイリー(1998.5.30)は第52回朝日杯3歳S(現朝日杯フューチュリティS、GI)勝ち。

*

第35回札幌3歳S(現札幌2歳S、GIII)の結果(上位5頭。馬齢は現年齢表記に合わせる)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 上り
3F
馬体重
[前走比]
調教師
1 7 ジャングルポケット 牡2 53 千田輝彦 1:49.6 レコード 35.8 466
[+10]
渡辺栄 5
2 10 タガノテイオー 牡2 53 藤田伸二 1:49.8 1.1/2 36.0 424
[-12]
松田博資 4
3 3 テイエムオーシャン 牝2 53 本田優 1:49.9 1/2 36.5 438
[+2]
西浦勝一 1
4 1 トーセングローリー 牡2 53 上村洋行 1:50.5 3.1/2 36.3 438
[+2]
田村康仁 11
5 8 マイネルカーネギー 牡2 53 横山典弘 1:50.5 ハナ 36.5 454
[+4]
稲葉隆一 2

札幌芝1800mの新馬戦に続いて臨んだのは同じ舞台の重賞、第35回札幌3歳S。新馬戦に続いて5番人気だったジャングルポケットでしたが、新馬戦同様タガノテイオーを退けて、札幌芝1800mの2歳レコードでの快勝でした。負かした相手が強いと、やはり、その勝利が際立ちます。上述のとおりタガノテイオーは東京スポーツ杯3歳S勝ち、そしてテイエムオーシャン(1998.4.9)は、第52回阪神3歳牝馬S(現阪神ジュベナイルフィリーズ、GI)、第61回桜花賞(GI)、第6回秋華賞(GI)とGI3勝の名牝でした。

*

第35回共同通信杯(GIII)の結果(上位5頭)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 上り
3F
馬体重
[前走比]
調教師
1 8 ジャングルポケット 牡3 56 角田晃一 1:47.9 34.8 474
[+8]
渡辺栄 1
2 12 プレジオ 牡3 55 O.ペリエ 1:48.2 2 34.9 418
[-14]
藤沢和雄 3
3 2 スイートゥンビター 牡3 55 後藤浩輝 1:48.4 1.1/2 35.3 478
[-12]
松山康久 2
4 9 シングンオペラ 牡3 55 張田京 1:48.4 ハナ 34.8 438
[-12]
岡林光浩 9
5 3 ダンシングカラー 牡3 55 松永幹夫 1:48.5 3/4 34.8 486
[+2]
領家政蔵 8

満2歳暮れの第17回ラジオたんぱ杯3歳S(当時GIII。現ホープフルS、GI)でアグネスタキオン(1998.4.13)に続く2着だったジャングルポケット。3歳初戦に選んだのが、名馬の登竜門、第35回共同通信杯。4戦目で初めて1番人気に推されたジャングルポケット、「府中千八展開要らず」を地で行ったのか、大外ぶん回し、直線で追うとヨレ加減の若さを見せながらも、チカラの違いで2着のプレジオ(1998.4.5)に2馬身差を着けていました。

*

第68回東京優駿(GI)の結果(上位5頭)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 上り
3F
馬体重
[前走比]
調教師
1 18 ジャングルポケット 牡3 57 角田晃一 2:27.0 35.6 470
[-4]
渡辺栄 1
2 9 ダンツフレーム 牡3 57 河内洋 2:27.2 1.1/2 35.6 480
[-6]
山内研二 3
3 6 ダンシングカラー 牡3 57 江田照男 2:27.6 2.1/2 36.8 480
[0]
領家政蔵 11
4 12 ボーンキング 牡3 57 K.デザーモ 2:27.7 クビ 36.5 498
[0]
松田国英 6
5 17 クロフネ 牡3 57 武豊 2:27.9 1.1/4 36.7 510
[+4]
松田国英 2

2001年の第68回東京優駿。2回戦って2回とも負かされた相手、アグネスタキオンは4戦4勝のまま不意に離脱。かつて「順調に使って勝った馬には敵わないです」と述べられたのは、やはり4戦4勝のSS天才ランナー・フジキセキ(1992.4.15)の鞍上でもあった角田晃一騎手。そのフジキセキと同馬主、同厩舎、同厩務員、同騎手で臨んだ、第68回東京優駿。6年前の忘れ物、見事に取り戻した陣営。宿願、大願、念願、悲願。人々の願いを乗せて走ったジャングルポケット、レース後の勝利の雄叫びも印象に残る一戦でした。

*

第21回ジャパンカップ(GI)の結果(上位5頭)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 上り
3F
馬体重
[前走比]
調教師
1 6 ジャングルポケット 牡3 55 O.ペリエ 2:23.8 34.9 470
[0]
渡辺栄 2
2 4 テイエムオペラオー 牡5 57 和田竜二 2:23.8 クビ 35.1 480
[+10]
岩元市三 1
3 10 ナリタトップロード 牡5 57 渡辺薫彦 2:24.4 3.1/2 35.3 490
[-2]
沖芳夫 5
4 8 ステイゴールド 牡7 57 武豊 2:24.5 クビ 35.8 428
[0]
池江泰郎 4
5 1 メイショウドトウ 牡5 57 安田康彦 2:24.6 3/4 35.8 508
[-2]
安田伊佐夫 3

2001年の第21回ジャパンカップ。21世紀最初のジャパンカップは、象徴的なレースとなりました。↑の結果にもあるとおり、上位5番人気までを日本馬が占め、なおかつ5番人気馬までで掲示板を独占してしまいました。ある意味で、ジャパンカップがジャパンカップになり、ジャパンカップがジャパンカップでなくなったレース、とも言えるのではないでしょうか。

そんな第21回を勝ったのは、ジャングルポケット。逃げたティンボロア(1996.5.7)を向こう正面で後方から進出したトゥザヴィクトリー(1996.2.22)が交わすという、出入りの激しい乱ペースとなったこのレース。道中は中団やや後ろを進んだジャングルポケット、惑わされず落ち着いて走らせたのは、サスガに名手オリビエ・ペリエ。直線、先に抜け出したのは前年第20回の勝ち馬テイエムオペラオー(1996.3.13)。先行して息の入りが難しかったはずなのに、この強心臓馬は「さもありなん」と抜け出しにかかり、史上初となる同一競走馬によるジャパンカップ連覇を目指して、雄々しく馬場中央を駆けました。「すわっ、初めてのJRAGI8勝目が成されるのか!?」。そう思った瞬間、1頭だけ外から強襲を見せた鹿毛馬がいました。ジャングルポケット。仏国のトップジョッキーの左ムチに鼓舞されて、一歩一歩、詰め寄るようにして鋭伸。ゴールが近づくにつれ、前を行った栗毛馬との差は縮まって行き、最後の最後、本当に最後の最後で「クビ」だけ差し切ったところが決勝点でした。少しの差ではありましたが、差し切ったのは確か。ゴール後、ペリエ騎手が右手で握りこぶしを作った後、一本指を高々と挙げました。「日本産の3歳馬」として初めてジャパンカップ勝利を収めたジャングルポケットは、共同通信杯、東京優駿、そしてジャパンカップと東京芝3戦3勝。まさに府中の申し子。第8回でレース中の故障もあり5着に敗れた父トニービンの無念を晴らした、会心の勝利でした。

*

ジャングルポケット。現役引退後はトニービンの最良後継種牡馬として活躍を見せ

  1. ジャガーメイル(2004.5.8)
    →天皇賞・春(GI)ほか
  2. クィーンスプマンテ(2004.4.9)
    →エリザベス女王杯(GI)
  3. オウケンブルースリ(2005.2.24)
    →菊花賞(GI)、京都大賞典(GII)ほか
  4. トールポピー(2005.1.30)
    →優駿牝馬(GI)、阪神ジュベナイルフィリーズ(GI)ほか
  5. Jungle Rocket(2005.8.27)
    →ニュージーランドオークス(GI)
  6. トーセンジョーダン(2006.2.4)
    →天皇賞・秋(GI)、札幌記念(GII)、AJCC(GII)、アルゼンチン共和国杯(GII)ほか
  7. アヴェンチュラ(2008.3.7)
    →秋華賞(GI)、クイーンS(GIII)ほか。上述のトールポピーの全妹
  8. アウォーディー(2010.5.10)
    →JBCクラシック(JpnI)、日本テレビ盃(JpnII)、アンタレスS(GIII)、シリウスS(GIII)、名古屋大賞典(JpnIII)ほか
  9. ディアドムス(2012.1.24)
    →全日本2歳優駿(JpnI)、北海道2歳優駿(JpnIII)

等を始めとして、多くの重賞勝ち馬を送り込んでいます。

ジャングルポケット19歳、種牡馬として、もうひと花咲かせてくれることを期待しています。

  

それでは、これから走る馬、人すべてに幸多からんことを。

*

[ジャングルポケット(1998.5.7)の主な競走成績]

  1. 東京優駿(GI)、ジャパンカップ(GI)、共同通信杯(GIII)、札幌3歳S(GIII)
  2. 天皇賞・春(GI)、阪神大賞典(GII)、ラジオたんぱ杯3歳S(GIII)
  3. 皐月賞(GI)、札幌記念(GII)

通算13戦5勝、2着3回、3着2回。

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