シルクプリマドンナ(1997.4.22)-タイム差なしの好勝負を辿る(No.9)-

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シルクプリマドンナ 牝 鹿毛 1997.4.22生~2016.1.26没 新冠町・早田牧場新冠支場生産 馬主・(有)シルクレーシング 栗東・山内 研二厩舎

シルクプリマドンナ(1997.4.22)の4代血統表
ブライアンズタイム
黒鹿毛 1985.5.28
種付け時活性値:0.75【11】
Roberto
鹿毛 1969.3.16
Hail to Reason
黒鹿毛 1958.4.18
Turn-to 1951
Nothirdchance 1948
Bramalea
黒鹿毛 1959.4.12
Nashua 1952.4.14
Rarelea 1949
Kelley’s Day
鹿毛 1977.5.11
Graustark
栗毛 1963.4.7
Ribot 1952.2.27
Flower Bowl 1952
Golden Trail
黒鹿毛 1958.3.5
Hasty Road 1951
Sunny Vale 1946
バウンドトゥダンス
鹿毛 1986.4.12
仔受胎時活性値:0.50【10】

Northern Dancer
鹿毛 1961.5.27
種付け時活性値:0.00【24】
Nearctic
黒鹿毛 1954.2.11
Nearco 1935.1.24
Lady Angela 1944
Natalma
鹿毛 1957.3.26
Native Dancer 1950.3.27
Almahmoud 1947.5.18
Truly Bound
鹿毛 1978.6.4
仔受胎時活性値:1.75【7】
In Reality
鹿毛 1964.3.1
種付け時活性値:1.25【13】
Intentionally 1956.4.2
My Dear Girl 1957.2.17
Natashka
黒鹿毛 1963.5.6
仔受胎時活性値:1.50【14】
Dedicate
鹿毛 1952
種付け時活性値:0.50【10】
Natasha
鹿毛 1952
仔受胎時活性値:0.50【10】

<5代血統表内のクロス:Nasrullah5×5>

シルクプリマドンナ(1997.4.22)の0の理論的総括
母父 祖母父 曾祖母父
ブライアンズタイム
(Roberto系)
Northern Dancer
(Nearctic系)
In Reality
(Intent系)
Dedicate
(Princequillo系)
形相の遺伝 料の遺伝 牝系 母の何番仔?
In Reality
(Truly Bound)
4.25
(【10】+【7】+【14】+【10】)
全弟モエレアドミラル
(No. 13-c)
6番仔
(4連産目)

*

2000年の第61回優駿牝馬(GI。東京芝2400m)の結果(上位5頭。馬齢は現年齢表記に合わせる)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 通過
順位
上り
3F
馬体重
[増減]
調教師
1 5 シルクプリマドンナ 牝3 55 藤田 伸二 2:30.2 7-7-6-6 34.9 424
[+2]
山内 研二 1
2 12 チアズグレイス 牝3 55 松永 幹夫 2:30.2 クビ 5-3-3-3 35.0 490
[0]
山内 研二 5
3 16 オリーブクラウン 牝3 55 高橋 亮 2:30.4 1 1/2 2-2-2-2 35.4 440
[-6]
松田 国英 16
4 2 レディミューズ 牝3 55 岡部 幸雄 2:30.5 1/2 1-1-1-1 35.6 466
[-2]
藤沢 和雄 11
5 8 グランパドドゥ 牝3 55 河内 洋 2:30.5 クビ 9-12-11-11 34.9 444
[0]
長浜 博之 2
2000年の第61回優駿牝馬(GI。東京芝2400m)のラップタイム
1F毎の
ラップ
12.4 – 11.4 – 12.6 – 13.6 – 13.5 – 13.0 – 13.1 – 12.7 – 12.6 – 12.3 – 11.2 – 11.8
ラップの
累計タイム
12.4 – 23.8 – 36.4 – 50.0 – 1:03.5 – 1:16.5 – 1:29.6 – 1:42.3 – 1:54.9 – 2:07.2 – 2:18.4 – 2:30.2
上り 4F 47.9 – 3F 35.3

20世紀最後のJRA牝馬クラシックとなった第61回優駿牝馬。東京芝2400m、曇の稍重馬場、18頭立ての結果を見れば、山内研二厩舎のステーブルメイト2頭による決着。コーナー毎の通過順位だけを見ればシルクプリマドンナが差して、チアズグレイス(1997.3.30)が前で粘ったように見えますが、実際には直線でインからいち早く抜け出しに掛かったのはシルクプリマドンナであり、チアズグレイスがアウトから差し迫ったという決勝点前。内の赤の帽子に「水色、赤玉霰、袖赤一本輪」の勝負服を乗せた424kgの小柄な鹿毛、外の緑の帽子に「紫、黄玉霰、桃袖」の勝負服を乗せた490kgの大柄な鹿毛。共に山内厩舎の所属馬を示す桃の生地に緑の三つ柏のメンコを着けた2頭の競り合い、最後は僅かに「クビ」だけ先んじて、シルクプリマドンナ。鞍上の藤田伸二騎手はゴール後に右手を大きく上げてのガッツポーズを見せられました。

シルクプリマドンナがデビューしたのは2000年1月30日。京都ダート1800mの新馬戦で2着馬に2秒7差という大差圧勝を飾ると、2月の京都ダート1200mの500万下でも3馬身半差の快勝。遅れてやって来た大物牝馬という感もあったシルクプリマドンナ、3月の報知杯4歳牝馬特別(GII)で初めての芝に挑むと、ここはサイコーキララ(1997.5.1)から1と4分の3馬身差の2着。芝でもやれると臨んだ4月の桜花賞(GI)では僚馬チアズグレイスから1馬身半+アタマ差の3着。そうして迎えたのが5月の優駿牝馬。月1走のペースで走っていた戦前までの出走歴を見直せば芝未勝利、重賞未勝利であったシルクプリマドンナ。それでも「ファンはよく分かっている」という単勝3.7倍の1番人気に応えて、見事にクラシックホースの栄冠を蹄中に収めたのでした。

上段でシルクプリマドンナに関して「424kgの小柄な鹿毛」と書きました。現在も残るGI級競走の最軽量馬体重勝利は、384kgというカネヒムロ(1968.3.28)-カネミノブ(1974.5.23)の母-による優駿牝馬であり、私が競馬を見始めた頃は「小さな馬が頑張るオークス」という印象もありました。元号が平成になって以降、1989年以後の優駿牝馬勝ち馬の中で馬体重が430kg未満の馬を確認しますと、

  1. エイシンサニー(1987.3.29) → 414kg
  2. アドラーブル(1989.3.28) → 410kg
  3. ダンスパートナー(1992.5.25) → 420kg
  4. エリモエクセル(1995.5.18) → 422kg
  5. ウメノファイバー(1996.5.5) → 428kg
  6. シルクプリマドンナ(1997.4.22) → 424kg
  7. シンハライト(2013.4.11) → 422kg

私がライブでレースを見たのはダンスパートナーからですが、エリモエクセル、ウメノファイバー、シルクプリマドンナと3年連続で420kg台の馬たちが勝利したのですから、それは「小さな馬が頑張るオークス」という印象を持ってもおかしくはありません。近年は馬体の大型化の傾向も見られ、21世紀以降は430kg未満の馬はシンハライト1頭だけです。430kg「未満」としたのが恣意的な要素ではありますが、430kgちょうどで優駿牝馬を制した馬にはダイワエルシエーロ(2001.5.11)ミッキークイーン(2012.2.8)がいます。

また、シルクプリマドンナの生産を見れば「新冠町・早田牧場新冠支場」。レオダーバン(1989.4.25)ビワハヤヒデ(1990.3.10)マーベラスクラウン(1990.3.19)ナリタブライアン(1991.5.3)マーベラスサンデー(1992.5.31)ビワハイジ(1993.3.7)シルクジャスティス(1994.3.18)に続く8頭目のGI馬でしたが、シルクプリマドンナは早田牧場生産の最後のGI馬となってしまいました。私の10代後半から20代前半に掛けて、競馬者としての最初期に出会った馬たちで思い出深い馬ばかり。けれど、彼ら彼女らの故郷は、既に無く……。20世紀末にGI馬を続出させた早田牧場が倒産の憂き目にあったのは、シルクプリマドンナが優駿牝馬を制してから僅かに2年半後、2002年11月のことでした。

ただ、それでも。シルクプリマドンナの血は繋がって行きます。シルクプリマドンナが1頭だけ残した牝駒ラストプリマドンナ(2015.1.30)は繁殖牝馬として子孫を残し始めました。そしてまたアグネスタキオン(1998.4.13)との仔であるデヴィルズドリンク(2007.3.21)は不出走のまま英国に渡り、種牡馬として産駒がスカンジナビアで走っています

シルクプリマドンナ、その血が日本のみならず世界の血統の中で活きて行くことを切に願います。

*

シルクプリマドンナの優駿牝馬の記事を書いて行く内に「別に意図していた訳ではないけれど、今年は1997年生まれ世代の馬たちを書く機会になったなぁ。ならば桜花賞馬も記しておこう」と思ってしまい、例によって、手数を増やす悪癖が出てしまいました。そんな訳で、優駿牝馬でシルクプリマドンナにタイム差なしのクビ差まで迫った桜花賞馬も紹介しておきます。

チアズグレイス 牝 鹿毛 1997.3.30生~2017.2.21没 門別町・白井牧場生産 馬主・北村 キヨ子氏 栗東・山内 研二厩舎

チアズグレイス(1997.3.30)の4代血統表
サンデーサイレンス
青鹿毛 1986.3.25
種付け時活性値:0.50【10】

Halo
黒鹿毛 1969.2.7
Hail to Reason
黒鹿毛 1958.4.18
Turn-to 1951
Nothirdchance 1948
Cosmah
鹿毛 1953.4.4
★Cosmic Bomb 1944
Almahmoud 1947.5.18
Wishing Well
鹿毛 1975.4.12
Understanding
栗毛 1963.2.17
★Promised Land 1954.3.31
Pretty Ways 1953.3.21
Mountain Flower
鹿毛 1964.3.23
Montparnasse 1956
Edelweiss 1959.2.15
チアズフラワー
鹿毛 1990.4.24
仔受胎時活性値:1.50【6】
Al Nasr
黒鹿毛 1978.2.11
種付け時活性値:0.75【11】
Lyphard
鹿毛 1969.5.10
Northern Dancer 1961.5.27
Goofed 1960.3.29
Caretta
鹿毛 1973.5.7
Caro 1967.4.11
Klainia 1960
デュカイナ
鹿毛 1981.2.23
仔受胎時活性値:2.00(0.00)【8】
Northfields
栗毛 1968.3.6
種付け時活性値:1.00【12】
Northern Dancer 1961.5.27
Little Hut 1952
Dumka
鹿毛 1971.3.31
仔受胎時活性値:0.25【9】
Kashmir
黒鹿毛 1963
種付け時活性値:1.75【7】
Faizebad
黒鹿毛 1962.2.24
仔受胎時活性値:2.00(0.00)【8】

<5代血統表内のクロス:Northern Dancer4×4(母方)>

チアズグレイス(1997.3.30)の0の理論的総括
母父 祖母父 曾祖母父
サンデーサイレンス
(Halo系)
Al Nasr
(Lyphard系)
Northfields
(Northern Dancer系)
Kashmir
(Owen Tudor系)
形相の遺伝 料の遺伝 牝系 母の何番仔?
Kashmir
(Queen of Speed)
5.75 or 3.75 or 1.75
(【6】+【8】+【9】+【8】)
全弟チアズシュタルク
(No. 21)
3番仔
(3連産目)

*

2000年の第60回桜花賞(GI。阪神芝1600m)の結果(上位5頭。馬齢は現年齢表記に合わせる)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 通過
順位
上り
3F
馬体重
[増減]
調教師
1 8 チアズグレイス 牝3 55 松永 幹夫 1:34.9 3-2-2 36.5 490
[-16]
山内 研二 6
2 11 マヤノメイビー 牝3 55 幸 英明 1:35.1 1 1/2 6-7-4 36.4 448
[0]
坂口 正大 7
3 4 シルクプリマドンナ 牝3 55 藤田 伸二 1:35.1 アタマ 7-7-8 36.2 422
[+4]
山内 研二 3
4 13 サイコーキララ 牝3 55 石山 繁 1:35.2 1/2 11-9-4 36.4 480
[0]
浜田 光正 1
5 2 サニーサイドアップ 牝3 55 四位 洋文 1:35.4 1 1/4 11-11-11 36.1 432
[+2]
山内 研二 8
2000年の第60回桜花賞(GI。阪神芝1600m)のラップタイム
1F毎の
ラップ
12.5 – 11.0 – 10.9 – 11.9 – 11.9 – 12.0 – 12.1 – 12.6
ラップの
累計タイム
12.5 – 23.5 – 34.4 – 46.3 – 58.2 – 1:10.2 – 1:22.3 – 1:34.9
上り 4F 48.6 – 3F 36.7

チアズグレイス、前走チューリップ賞(GIII)1番人気10着からの巻き返しは、馬体重16kg減というシェイプアップ効果もあったのでしょうか。4角先頭から抜け出したクビの高い走りのチアズグレイス、差し迫った芦毛マヤノメイビー(1997.4.27)、僚馬シルクプリマドンナ等の追撃を1と2分の1馬身振り切ったところが阪神芝1600mの決勝点。このチアズグレイスの桜花賞制覇により、種牡馬サンデーサイレンスは五大クラシック完全制覇となったのでした。

チアズグレイスはシルクプリマドンナとは対象的に490kgという馬体の大きな牝馬で、元号が平成になって以降、1989年以後ではジュエラー(2013.1.17)の494kgに次ぐ2番目に大柄な桜花賞馬。なお、平成以降の桜花賞を430kg未満で制したのはニシノフラワー(1989.4.19)の420kg、キストゥヘヴン(2003.4.25)の418kgの2例でした。

チアズグレイスの走法は、素人目には「距離が伸びてどうか」と思ったのですが、鞍上の松永幹夫騎手は「距離が伸びても問題ない」と談話されていたと記憶しています。チアズグレイスの優駿牝馬2着から「むぅ。ミッキー、サスガはプロの馬乗り。恐れ入りました」と思ったのも懐かしい思い出です。

 

という訳で、シルクプリマドンナとチアズグレイス、優駿牝馬でワンツーフィニッシュを飾った山内厩舎のクラシックホース2頭を紹介した記事でした。

 

それでは、これから走る馬、人すべてが無事でありますように。

*

[シルクプリマドンナ(1997.4.22)の主な競走成績]

  1. 優駿牝馬(GI)
  2. 報知杯4歳牝馬特別(GII)
  3. 桜花賞(GI)

通算15戦3勝、2着1回、3着1回。

*

[チアズグレイス(1997.3.30)の主な競走成績]

  1. 桜花賞(GI)
  2. 優駿牝馬(GI)

通算11戦3勝、2着3回。

*

マイシンザン
マイシンザン

おまはんは早田牧場が生まれ故郷であり、CBスタッドでも繋養されていたから、生粋の早田牧場関連馬でもあるな。

ワイルドブラスター
ワイルドブラスター

ええ。かくいう兄さんも、CBスタッドで繋養されていましたよね。

マイシンザン
マイシンザン

そうやな。馬の縁も不思議なもので、おまはんとは終の棲家までご一緒させてもらったな。

ワイルドブラスター
ワイルドブラスター

はい。兄さんと仲良くやらせてもらえて、本当に幸せでした。

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