Wild Again(1980.5.22)-第1回ブリーダーズカップ・クラシック(米GI)の勝ち馬-

Special feature

Wild Again(ワイルドアゲイン) 牡 黒鹿毛 1980.5.22生~2008.12.5没 米国・W. Paul Little生産 馬主・Black Chip Stable (William M. Allen) 米国・Vincent A. Timphony厩舎

Wild Again(1980.5.22)の4代血統表
Icecapade
芦毛 1969.4.4
種付け時活性値:0.50【10】
Nearctic
黒鹿毛 1954.2.11
Nearco
黒鹿毛 1935.1.24
Pharos 1920.4.4
Nogara 1928
Lady Angela
栗毛 1944
Hyperion 1930.4.18
Sister Sarah 1930
Shenanigans
芦毛 1963.3.17
Native Dancer
芦毛 1950.3.27
Polynesian 1942.3.8
Geisha 1943
Bold Irish
黒鹿毛 1948
Fighting Fox 1935
Erin 1927
Bushel-n-Peck
黒鹿毛 1958.3.21
仔受胎時活性値:1.25【21】
Khaled
黒鹿毛 1943
種付け時活性値:1.50【14】
Hyperion
栗毛 1930.4.18
Gainsborough 1915.1.24
Selene 1919
Eclair
鹿毛 1930
Ethnarch 1922
Black Ray 1919
Dama II
鹿毛 1950
仔受胎時活性値:1.75【7】
Dante
黒鹿毛 1942
種付け時活性値:1.75【7】
Nearco 1935.1.24
Rosy Legend 1931
Clovelly
鹿毛 1938
仔受胎時活性値:0.75【11】
Mahmoud
芦毛 1933
種付け時活性値:1.00【4】
Udaipur
鹿毛 1929
仔受胎時活性値:2.00(0.00)【8】

<5代血統表内のクロス:Nearco3×4、Hyperion3×4>

Wild Again(1980.5.22)の0の理論的総括
母父 祖母父 曾祖母父
Icecapade
(Nearctic系)
Khaled
(Hyperion系)
Dante
(Nearco系)
Mahmoud
(Blenheim系)
形相の遺伝 料の遺伝 牝系 母の何番仔?
Dante
(Nogara)
5.75 or 3.75
(【21】+【7】+【11】+【8】)
ヒンドスタンと同牝系
(No. 3-e)
11番仔?

*

1984年の第1回ブリーダーズカップ・クラシック(米GI。ハリウッドパーク・ダート10F)の結果(上位5頭)


馬名 性齢
騎手 走破時計
・着差
調教師
1 2 Wild Again 牡4 57.2 Pat Day 2:03 2/5 Vincent A. Timphony 6
2 4 Slew O’ Gold 牡4 57.2 Angel Cordero, Jr. 1/2 + アタマ John O. Hertler C1
3 6 Gate Dancer 牡3 55.3 Laffit A. Pincay, Jr. 2位入線3着降着 Jack C. Van Berg 2
4 5 Track Barron 牡3 55.3 Eddie Maple 5 LeRoy S. Jolley 5
5 8 Desert Wine 牡4 57.2 Eddie J. Delahoussaye 8 1/2 Jerry M. Fanning 3

2023年の現在に続く米国の競馬の祭典ブリーダーズカップ・ワールド・チャンピオンシップ。その初年度1984年の7番目のレース、メインはブリーダーズカップ・クラシック。米国競馬の根幹たるダート10ハロン、その頂上決戦の初回に集結した8頭を人気順を確認してみますと、

  1. Slew O’ Gold(1980.4.19)とMugatea(1980.2.5)
    →同厩舎によるカップリング。Slew O’ GoldはジョッキークラブゴールドC(米GI)2回、ウッドワードS(米GI)2回、ホイットニーH(米GI)、ウッドメモリアルS(米GI)、マールボロC招待H(米GI)と戦前までにGI7勝。Mugateaは当年1984年のフォアゴーH(米GII)勝ち馬
  2. Gate Dancer(1981.3.31)
    →プリークネスS(米GI)、スーパーダービー(米GI)と3歳GI2レースをレコードで制してやって来た3歳代表格
  3. Desert Wine(1980.2.23)
    →チャールズHストラブS(米GI)、カリフォルニアンS(米GI)、ハリウッドゴールドC(米GI)と当年の6月までにGI3連勝
  4. Precisionist(1981.2.28)
    →1984年時点ではスワップスS(米GI)勝ちのみも、後にブリーダーズカップ・スプリント(米GI)、ウッドワードS(米GI)、チャールズHストラブS(米GI)、カリフォルニアンS(米GI)、サンフェルナンドS(米GI)を勝利する1980年代の米国の名馬の1頭
  5. Track Barron(1981.2.27)
    →1984年時点ではヴォスバーグS(米GI)、ドワイヤーS(米GI)を勝ち、翌1985年にホイットニーH(米GI)、ウッドワードS(米GI)も勝利
  6. Wild Again(1980.5.22)
    →前々走メドウランズC(米GI)でようやくGI初勝利を遂げた本稿の主役
  7. Canadian Factor(1980.3.31)
    →当年のエクセルシオールH(米GII)勝ち馬は、前年1983年の第3回ジャパンカップにも出走してくれていました

1980年生まれ世代の4歳馬5頭、1981年生まれ世代の3歳馬3頭による一戦。名馬Seattle Slew(1974.2.15)の代表産駒の1頭としても名高いSlew O’ Goldは前年のジョッキークラブゴールドCから当年のジョッキークラブゴールドCまでGI5勝を含む6連勝中と完全に本格化の様相を見せており、日本風に言えば単勝1.6倍の圧倒的な1番人気。後を追う馬たちはGate Dancerが4.5倍、Desert Wineが6.6倍、Precisionistが8.7倍、Track Barronが26.1倍と来て、Wild Againは32.3倍。Wild Again、↑で示した戦歴のメンバーたちが相手では、日本で言うところのブービー人気でも致し方なし。

ただ、勝負はやってみなければ分からないもの。

と、ひとつ前に行われたブリーダーズカップ・ターフ(米GI)の記事でも書いた一文を再び記すことになるのですが、Precisionist、Mugatea、そしてWild Againの熾烈な逃げ先行で始まったハリウッドパーク・ダート10ハロン。通過時計を見れば最初の2ハロンが22秒3/5と、10ハロンのレースであったのにテンの叩き合いにかなり気合が入っていたのが分かります。

そんな中でもWild Again、3頭の雁行から3ハロンあたりで抜け出して先頭に立つと快調な逃げ。4ハロン通過45秒3/5とやはりハイラップでバックストレッチを進むと、6ハロン1分10秒3/5とペースを緩めたところで、外から迫って来たのが離れた5番手にいたSlew O’ Gold。サスガにエクリプス賞年度代表馬を狙うトップホースの迫力というところで、最終コーナーを回る時には先を行くWild Againを捉えるかに見えました。

が、8ハロン通過1分37秒と更に脚を溜めていたのか、Wild Again。終身成績8803勝(!!)の名手パット・デイ騎手の鼓舞に応えると、ホームストレッチで同期の名馬を封じる粘り腰を発揮。そんな年長馬2頭の勝負に割って入ったのが、道中7番手の位置からマクリを発揮したGate Dancer。ラスト1ハロンは3頭の気迫に溢れた凌ぎ合い。内の鼻面が白い黒鹿毛の4歳牡馬、真ん中の鹿毛の4歳牡馬、外の白いメンコと黄色いブリンカーを着けた鹿毛の3歳牡馬。桃色の帽子に桃色地と黒のポルカドットの勝負服、灰色の帽子に灰色と黒の勝負服、緑色の帽子に緑色の勝負服。パット・デイ、アンヘル・コルデロ・ジュニア、ラフィット・ピンカイ・ジュニアという、いずれも米国競馬名誉の殿堂入りの腕達者たちの追い比べは、内のWild Againが外のGate Dancerの差し込みを「アタマ」だけ抑えたところが、ハリウッドパーク・ダート10ハロン2分3秒3/5のゴールポスト。真ん中のSlew O’ Goldは最後鞍上が追いづらそうに見えましたけれど、僅かに半馬身遅れて3位でのフィニッシュでした。

Wild Again、1番人気馬と2番人気馬を抑えてのアップセットでしたが、自分で勝ちに行く競馬を見せて、なおかつ最後の最後まで先頭を譲らなかったのですから、本当に「強い」と思わせる勝利でした。強い者が勝つのではない、勝った者が強いのだという、独国のサッカー選手であるフランツ・ベッケンバウアーの言葉を想起するレースが、準メインとメインで続いた第1回ブリーダーズカップでしたけれど、メインのクラシックはWild Againのアップセットだけに留まらず、2位入線のGate Dancerが3位入線のSlew O’ Goldに対するインターフェアにより3着降着、Slew O’ Goldは繰り上がりで2着という波乱の結末となりました。

*

Wild Againは第1回ブリーダーズカップ・クラシック勝ち馬の栄誉に違わず、世代を重ねる仕事でも成功を収めました。種牡馬としての代表産駒を示しておきますと、

  1. A Wild Ride(1987.1.23)
    →シュヴィーH(米GI)、ヘムステッドH(米GI)ほか。牝馬
  2. Wilderness Song(1988.5.13)
    →スピンスターS(米GI)ほか。牝馬
  3. Elmhurst(1990.2.14)
    →ブリーダーズカップ・スプリント(米GI)ほか。せん馬
  4. Wild Escapade(1992.4.26)
    →ホープフルS(米GI)ほか。牡馬
  5. Wild Event(1993.2.1)
    →アーリータイムズ・ターフクラシックS(米GI)ほか。牡馬。パラダイスクリーク(1989.2.4)の半弟。伯国首位種牡馬5回の大種牡馬
  6. ワイルドラッシュ(1994.4.15)
    →メトロポリタンH(米GI)、カーターH(米GI)ほか。牡馬。パーソナルラッシュ(2001.3.18)トランセンド(2006.3.9)等の父
  7. Vicar(1996.2.19)
    →フロリダダービー(米GI)、ファウンテンオブユースS(米GI)ほか。牡馬
  8. Milwaukee Brew(1997.1.31)
    →サンタアニタH(米GI)2回ほか。牡馬。加国首位種牡馬2回の名種牡馬
  9. Shine Again(1997.1.14)
    →バレリーナH(米GI)2回ほか。牝馬
  10. Sarava(1999.3.2)
    →ベルモントS(米GI)ほか。牡馬
  11. Offlee Wild(2000.4.5)
    →サバーバンH(米GI)ほか。牡馬。ブリーダーズカップ・クラシック勝ち馬Bayern(2011.5.3)の父
  12. ナリタキングオー(1992.3.18)
    →京都新聞杯(GII)、スプリングS(GII)、共同通信杯4歳S(GIII)ほか
  13. タイキリオン(1999.4.9)
    →ニュージーランドT(GII)ほか
  14. ワイルドブラスター(1992.4.13)
    →アンタレスS(GIII)、マーチS(GIII)2回ほか

米GI馬11頭を始めとして多くの駿馬を送り出しました。非Northern Dancer(1961.5.27)のNearctic系を直系として21世紀に伝えた原動力と言っても差し支えない活躍を見せた種牡馬Wild Again、日本に輸入された仔たちも印象に残っています。ナリタキングオーは現年齢表記3歳時の重賞3勝と共に、6歳時の大阪城S(OP)で逃げ切り勝ちを収めた際「やっぱり重賞を3勝もする馬はオープン特別では格が違うのか」と思ったもの。タイキリオンはタイキフォーチュン(1993.2.9)、タイキダイヤ(1996.4.1)の弟で中山芝1600mのニュージーランドTを1分32秒1で制した時「この兄弟は3歳春にマイル重賞をビックリする時計で勝つんやな」と思ったもの。そうして代表産駒の最後に記したワイルドブラスター。2回会いに行った鹿毛の流星、現役時代に着けていた赤メンコに隠されていた素顔は男前でした。

#JRAの重賞は勝てなかったものの、エーブアゲイン(1991.3.23)も素質馬であったと思います。またWild Againのブルードメアサイアーとしての代表産駒には、言わずと知れたジャスタウェイ(2009.3.8)がいます。

*

[Wild Again(1980.5.22)の主な競走成績]

  1. ブリーダーズカップ・クラシック(米GI)、メドウランズC(米GI)、オークローンH(米GII)、ニューオーリンズクラシックS(米GII)
  2. メドウランズC(米GI)
  3. サバーバンH(米GI)、コーンハスカーH(米GII)

通算28戦8勝、2着7回、3着4回。

Wild Again - Hall of Champions

*

そんな訳で

1984年の第1回ブリーダーズカップ・7レースの勝ち馬たち
馬名
(生年月日)
[F No.]
母の
何番仔?
[料の遺伝]
4代血統構成
母父 祖母父 曾祖母父
第1回
ブリーダーズカップ・ジュヴェナイル
(米GI。ハリウッドパーク・ダート8F)
Chief’s Crown
(1982.4.7)

[23-b]
2番仔
(2連産目)
[3.50]
Danzig
(Northern Dancer系)
Secretariat
(Bold Ruler系)
Swoon’s Son
(Teddy系)
★T. V. Lark
(Nasrullah系)
第1回
ブリーダーズカップ・ジュヴェナイルフィリーズ
(米GI。ハリウッドパーク・ダート8F)
Outstandingly
(1982.3.25)

[1-s]
5番仔?
(2連産目?)
[5.75]
★Exclusive Native
(Raise a Native系)
Round Table
(Princequillo系)
Nasrullah
(Nearco系)
War Admiral
(Man o’ War系)
第1回
ブリーダーズカップ・スプリント
(米GI。ハリウッドパーク・ダート6F)
Eillo
(1980.2.17)

[12-b]
3番仔?
[6.50]
Mr. Prospector
(Raise a Native系)
Northern Dancer
(Nearctic系)
Barbizon
(Sickle系)
The Doge
(Teddy系)
第1回
ブリーダーズカップ・マイル
(米GI。ハリウッドパーク芝8F)
Royal Heroine
(1980.5.12)

[1-w]
2番仔?
[4.25 or 2.25]
リイフオー
(Lyphard系)
Relko
(Teddy系)
Grey Sovereign
(Nasrullah系)
Borealis
(Teddy系)
第1回
ブリーダーズカップ・ディスタフ
(米GI。ハリウッドパーク・ダート10F)
Princess Rooney
(1980.3.22)

[1-s]
3番仔?
[7.25 or 5.25]
Verbatim
(Prince John系)
Drone
(Sir Gaylord系)
Law and Order
(Nasrullah系)
Bold Venture
(Swynford系)
第1回
ブリーダーズカップ・ターフ
(米GI。ハリウッドパーク芝12F)
Lashkari
(1981.4.3)

[5-e]
3番仔?
(2連産目?)
[4.00 or 2.00]
Mill Reef
(Never Bend系)
Right Royal
(Owen Tudor系)
Crepello
(Blenheim系)
Bois Roussel
(St.Simon系)
第1回
ブリーダーズカップ・クラシック
(米GI。ハリウッドパーク・ダート10F)
Wild Again
(1980.5.22)

[3-e]
11番仔?
[5.75 or 3.75]
Icecapade
(Nearctic系)
Khaled
(Hyperion系)
Dante
(Nearco系)
Mahmoud
(Blenheim系)

と確認して参りました、1984年の第1回ブリーダーズカップ・7レースの勝ち馬たち。39年を経た今年2023年、区切りの第40回を勝つ馬たちは、果たしてどんな血統、どんな成績の馬たちなのでしょうか。米国の競馬の祭典で駆ける駿馬たちに、日本の空の下から祈りを捧げておきます。

 

それでは、これから走る馬、人すべてが無事でありますように。

*

マイシンザン
マイシンザン

netkeiba.comさんのまとめによると、おまはん、日本で走ったWild Againさんの産駒としては稼ぎ頭なんやな。獲得賞金は2億7,077万4千円。

ワイルドブラスター
ワイルドブラスター

えっへん、実はそうなんですよ。

 

マイシンザン
マイシンザン

Equibaseでこのサイトの管理人が調べたところによると、↑で挙げたWild AgainさんのGI勝ち産駒の稼ぎ頭はMilwaukee Brewで、獲得賞金は2,879,612米ドル。

 

ワイルドブラスター
ワイルドブラスター

もうちょっと頑張ったら、父の仔として獲得賞金が多い馬の筆頭になれましたね。惜しかった。