デインヒル(1986.3.26)-北の踊り子とその子孫を辿る(No.14)-

Series

デインヒル(Danehill) 牡 鹿毛 1986.3.26生~2003.5.13没 米国・Juddmonte Farms生産 馬主・Prince Khalid Abdullah 英国・Jeremy Tree厩舎

デインヒル(1986.3.26)の4代血統表

Danzig
鹿毛 1977.2.12
種付け時活性値:0.00【8】
Northern Dancer
鹿毛 1961.5.27
Nearctic
黒鹿毛 1954.2.11
Nearco 1935.1.24
Lady Angela 1944
Natalma
鹿毛 1957.3.26 ♀
Native Dancer 1950.3.27
Almahmoud 1947.5.18
Pas de Nom
黒鹿毛 1968.1.27
★Admiral’s Voyage
黒鹿毛 1959.3.23
Crafty Admiral 1948.6.6
Olympia Lou 1952
Petitioner
鹿毛 1952
Petition 1944
Steady Aim 1943
Razyana
鹿毛 1981.4.18
仔受胎時活性値:1.00【4】
His Majesty
鹿毛 1968.4.15
種付け時活性値:1.00【12】
Ribot
鹿毛 1952.2.27
Tenerani 1944
Romanella 1943
Flower Bowl
鹿毛 1952
Alibhai 1938
Flower Bed 1946
Spring Adieu
鹿毛 1974.5.10
仔受胎時活性値:1.50【6】
Buckpasser
鹿毛 1963.4.28
種付け時活性値:0.50【10】
Tom Fool 1949.3.31
Busanda 1947
Natalma
鹿毛 1957.3.26 ♀
仔受胎時活性値:2.00(0.00)【16】
Native Dancer
芦毛 1950.3.27
種付け時活性値:1.50【6】
Almahmoud
栗毛 1947.5.18
仔受胎時活性値:0.25【9】

<5代血統表内のクロス:Natalma(♀)3×3、Hyperion5×5>

デインヒル(1986.3.26)の0の理論的総括
母父 祖母父 曾祖母父
Danzig
(Northern Dancer系)
His Majesty
(Ribot系)
Buckpasser
(Tom Fool系)
Native Dancer
(Sickle系)
形相の遺伝 料の遺伝 牝系 母の何番仔?
Native Dancer
(Unbreakable)
4.75 or 2.75 大伯父Northern Dancer
(No. 2-d)
初仔

*

1989年のスプリントC(英GI。ヘイドック芝6F)の結果(上位5頭)

馬名 性齢
騎手 走破時計
・着差
調教師
1 デインヒル 牡3 59.4 Pat Eddery 1:12.75 J Tree 2
2 Cricket Ball 牡6 61.7 W Carson 2 J Fellows 3
3 A Prayer For Wings せん5 61.7 M Roberts 1 J Sutcliffe 5
4 Silver Fling 牝4 60.3 J Matthias 短アタマ I A Balding 1
5 Shuttlecock Corner 牡3 59.4 M Birch 3 P S Felgate 6

*

Northern Dancer直仔の名種牡馬Danzigについては「北の踊り子とその子孫を辿る」シリーズのDanzig自身の記事で記しました。

Danzig(1977.2.12)-北の踊り子とその子孫を辿る(No.7)-
Danzig(ダンジグ/ダンチヒ/ダンツィヒ) 牡 鹿毛 1977.2.12生~2006.1.3没 米国・Derry Meeting Farm & W. S. Farish III生産 馬主・Henryk de Kwiatkowski 米国・Woodford C. Stephens厩舎

そんなDanzigの血については2016年頃にはノーザンダンサー系のおよそ50%がダンジグ以降の父系に支配ということですが、支配の一翼を担った孝行息子こそ、本稿の主役デインヒル。

デインヒル。競走馬としては英国のスプリントGI1勝に留まったものの、その能力の真価は種牡馬入りしてから、恐ろしいまでに発揮されたのでした。デインヒルの超絶とも言える繁殖能力のバックボーンについて、0の理論的な見解を示しておきますと、

  1. 父Danzigが8歳時交配のミニモの遺伝
  2. Natalma3×3の牝馬クロス
  3. 母父がRibot系のHis Majesty

が挙げられますでしょうか。1. と2. は近い代で先祖を0化するというところですが、デインヒルの直牝系の曾祖母がNatalmaであるということは、同時に自身の直祖父であるNorthern Dancerが大伯父でもあるということです。世界的名繁殖系の血が改めて発揮された存在こそデインヒルでした。そしてまた3. は、近時「恐らくHerod系であろう」と目されているSt. Simon(1881)の直系子孫Ribot系の血をブルードメアサイアーに持つことにより、浄化された血を次代に伝えられたというところでしょうか。

そんなデインヒルは真に卓抜した種牡馬成績を収めました。1990年代当時はまだまだ数が少なかったシャトルサイアーとして大活躍したデインヒル、以下にGI勝ちを収めた産駒を記しておきますと、、、

  1. Danish(1991.4.17)
    →クイーンエリザベス2世チャレンジC(米GI)ほか。牝馬
  2. Kissing Cousin(1991.4.1)
    →コロネーションS(英GI)ほか。牝馬
  3. Danarani(1991.10.10)
    →フライトS(豪GI)ほか。牝馬
  4. Danasinga(1991.11.3)
    →ストラドブロークH(豪GI)ほか
  5. Danewin(1991.10.2)
    →マッキノンS(豪GI)、コーフィールドS(豪GI)、ドゥームベンC(豪GI)、ローズヒルギニーズ(豪GI)、スプリングチャンピオンS(豪GI)ほか
  6. Danzero(1991.11.15)
    →ゴールデンスリッパーS(豪GI)ほか
  7. ジョワデニース(1991.11.21)
    →クイーンズランドオークス(豪GI)ほか。牝馬
  8. Daney Boy(1992.9.10)
    →カラカッタプレート(豪GI)ほか。せん馬。後述のMagic of Sydneyの全兄
  9. Flying Spur(1992.11.4)
    →オーストラリアンギニー(豪GI)、オールエイジドS(豪GI)、ゴールデンスリッパーS(豪GI)ほか。豪州首位種牡馬1回
  10. Nothin’ Leica Dane(1992.10.29)
    →ヴィクトリアダービー(豪GI)、スプリングチャンピオンS(豪GI)ほか
  11. Danehill Dancer(1993.1.30)
    →フィーニクスS(愛GI)、愛ナショナルS(GI)ほか。英愛首位種牡馬1回
  12. Dane Ripper(1993.10.2)
    →コックスプレート(豪GI)、オーストラリアンC(豪GI)、マニカトS(豪GI)、ストラドブロークH(豪GI)ほか。牝馬
  13. Danendri(1993.10.24)
    →オーストラリアンオークス(豪GI)、アンセットオーストラリアS(豪GI)ほか。牝馬
  14. Dashing Eagle(1993.10.26)
    →MRC1000ギニー(豪GI)、フライトS(豪GI)ほか。牝馬
  15. Magic of Sydney(1993.9.27)
    →スプリングチャンピオンS(豪GI)ほか。前述のDaney Boyの全弟
  16. Merlene(1993.9.27)
    →ゴールデンスリッパーS(豪GI)、サイアーズプロデュースS(豪GI)ほか。牝馬
  17. デザートキング(1994.3.31)
    →愛ダービー(GI)、愛2000ギニー(GI)、愛ナショナルS(GI)ほか
  18. Special Dane(1994.10.30)
    →CFオーアS(豪GI)ほか
  19. Tiger Hill(1995.4.11)★
    →バーデン大賞(独GI)2回、バイエリシェスツフトレネン(独GI)ほか
  20. Arena(1995.11.12)▲
    →ヴィクトリアダービー(豪GI)、カンタベリーギニー(豪GI)ほか
  21. Camarena(1995.10.17)▲
    →クイーンズランドダービー(豪GI)ほか。牝馬
  22. Danelagh(1995.8.17)▲
    →ブルーダイアモンドS(豪GI)ほか。牝馬
  23. Danske(1995.10.12)▲
    →新2000ギニー(GI)ほか
  24. Fairy King Prawn(1995.10.13)
    →安田記念(GI)ほか。せん馬
  25. Miss Danehill(1995.9.30)▲
    →クイーンズランドオークス(豪GI)ほか。牝馬
  26. Indian Danehill(1996.4.4)
    →ガネー賞(仏GI)ほか
  27. Wannabe Grand(1996.1.18)
    →チェヴァリーパークS(英GI)ほか。牝馬
  28. Blackfriars(1996.8.12)
    →ヴィクトリアダービー(豪GI)ほか。後述のLarrochaの全兄
  29. Catbird(1996.9.26)
    →ゴールデンスリッパーS(豪GI)ほか
  30. Emerald Dream(1996.10.1)
    →新インターナショナルS(GI)ほか。牝馬
  31. Redoute’s Choice(1996.8.15)
    →コーフィールドギニー(豪GI)、CFオーアS(豪GI)、マニカトS(豪GI)、ブルーダイアモンドS(豪GI)ほか。後述のPlatinum Scissorsの全兄。豪州首位種牡馬3回の名種牡馬
  32. Asia(1997.11.17)
    →オーストラリアンオークス(豪GI)ほか。牝馬
  33. Keeper(1997.8.30)
    →グッドウッドH(豪GI)ほか
  34. Mr. Murphy(1997.9.1)
    →オーストラリアンギニー(豪GI)、イートウェルリヴウェルC(豪GI)、フューチュリティS(豪GI)ほか。せん馬
  35. Aquarelliste(1998.1.23)
    →ディアヌ賞(仏GI)、ヴェルメイユ賞(仏GI)、ガネー賞(仏GI)ほか。牝馬。後述のArtiste Royalの全姉
  36. Banks Hill(1998.2.24)
    →ジャック・ル・マロワ賞(仏GI)、ブリーダーズカップ・フィリー&メアターフ(米GI)、コロネーションS(英GI)ほか。牝馬。名繁殖牝馬Hasili(1991.3.12)によるデインヒル産駒の全きょうだいGI馬4頭の内の1頭
  37. Mozart(1998.2.13)
    →ジュライC(英GI)、ナンソープS(英GI)ほか
  38. Regal Rose(1998.3.7)
    →チェヴァリーパークS(英GI)。牝馬
  39. Arlington Road(1998.9.27)
    →オールエイジドS(豪GI)ほか。せん馬
  40. Danestorm(1998.8.27)
    →ブリスベンC(豪GI)ほか。せん馬
  41. Ha Ha(1998.10.9)
    →ゴールデンスリッパーS(豪GI)、フライトS(豪GI)ほか。牝馬
  42. Magical Miss(1998.9.2)
    →VRCオークス(豪GI)、MRC1000ギニー(豪GI)ほか。牝馬
  43. Viking Ruler(1998.10.2)
    →スプリングチャンピオンS(豪GI)ほか
  44. Dress to Thrill(1999.2.19)
    →メイトリアークS(米GI)ほか。牝馬
  45. Landseer(1999.2.28)
    →仏2000ギニー(GI)、キーンランドターフマイル(米GI)ほか
  46. Westerner(1999.5.17)
    →アスコットゴールドC(英GI)、ロワイヤルオーク賞(仏GI)2回、カドラン賞(仏GI)2回ほか
  47. ファインモーション(1999.1.27)
    →エリザベス女王杯(GI)、秋華賞(GI)ほか。牝馬
  48. ロックオブジブラルタル(1999.3.8)
    →英2000ギニー(GI)、愛2000ギニー(GI)、ムーラン・ド・ロンシャン賞(仏GI)、セントジェームズパレスS(英GI)、サセックスS(英GI)、デューハーストS(英GI)、仏グランクリテリウム(GI)ほか
  49. Larrocha(1999.10.15)
    →サウスオーストラリアンオークス(豪GI)ほか。牝馬。前述のBlackfriarsの全妹
  50. Lucky Owners(1999.9.27)
    →香港マイル(GI)ほか
  51. Platinum Scissors(1999.11.8)
    →スプリングチャンピオンS(豪GI)ほか。前述のRedoute’s Choiceの全弟
  52. The Duke(1999.9.27)
    →香港マイル(GI)ほか。せん馬
  53. Clodovil(2000.4.9)
    →仏2000ギニー(GI)ほか
  54. Intercontinental(2000.3.19)
    →ブリーダーズカップ・フィリー&メアターフ(米GI)、メイトリアークS(米GI)ほか。牝馬。名繁殖牝馬Hasiliによるデインヒル産駒の全きょうだいGI馬4頭の内の1頭
  55. Light Jig(2000.4.29)
    →イエローリボンS(米GI)ほか。牝馬
  56. Spartacus(2000.3.4)
    →フィーニクスS(愛GI)、伊グランクリテリウム(GI)ほか
  57. Elvstroem(2000.11.14)
    →ドバイデューティフリー(UAE・GI)、ヴィクトリアダービー(豪GI)、コーフィールドC(豪GI)、アンダーウッドS(豪GI)、CFオーアS(豪GI)ほか
  58. Exceed And Excel(2000.9.5)
    →ニューマーケットH(豪GI)、インヴィテーションS(豪GI)ほか。豪州首位種牡馬1回
  59. Artiste Royal(2001.3.31)
    →チャールズウィッティンガム記念H(米GI)、クレメントLハーシュターフCh(米GI)ほか。前述のAquarellisteの全弟。停留精巣を抱えていたためか、良血でありながら長きに渡り走り続けた印象が強い馬です
  60. Cacique(2001.5.2)
    →マンノウォーS(米GI)、マンハッタンH(米GI)ほか。名繁殖牝馬Hasiliによるデインヒル産駒の全きょうだいGI馬4頭の内の1頭
  61. Grey Lilas(2001.1.28)
    →ムーラン・ド・ロンシャン賞(仏GI)ほか。牝馬
  62. North Light(2001.3.1)
    →英ダービー(GI)ほか
  63. Punctilious(2001.5.7)
    →ヨークシャーオークス(英GI)ほか。牝馬
  64. Al Maher(2001.10.17)
    →オーストラリアンギニー(豪GI)ほか
  65. Aqua D’Amore(2001.11.22)
    →フューチュリティS(豪GI)ほか。牝馬
  66. Fastnet Rock(2001.9.22)
    →オークレイプレート(豪GI)、ライトニングS(豪GI)ほか。豪州首位種牡馬2回
  67. Shinzig(2001.9.15)
    →CFオーアS(豪GI)ほか
  68. Zipping(2001.9.24)
    →オーストラリアンC(豪GI)、ターンブルS(豪GI)ほか。せん馬
  69. Echelon(2002.4.15)
    →愛メイトロンS(GI)ほか。牝馬
  70. Luas Line(2002.2.26)
    →ガーデンシティBCS(米GI)ほか。牝馬
  71. Mountain High(2002.4.14)
    →サンクルー大賞(仏GI)ほか
  72. Oratorio(2002.4.29)
    →エクリプスS(英GI)、愛チャンピオンS(GI)、ジャン・リュック・ラガルデール賞(仏GI)ほか
  73. Darci Brahma(2002.9.21)
    →TJスミスH(豪GI)、新2000ギニー(GI)、ワイカトスプリント(新GI)、テレグラフH(新GI)、オタキマオリS(新GI)ほか
  74. Aussie Rules(2003.2.6)★
    →仏2000ギニー(GI)、シャドウェルターフマイルS(米GI)ほか
  75. Champs Elysees(2003.3.21)★
    →ハリウッドターフC(米GI)、カナディアンインターナショナルS(加GI)、ノーザンダンサーターフS(加GI)ほか。名繁殖牝馬Hasiliによるデインヒル産駒の全きょうだいGI馬4頭の内の1頭
  76. Dylan Thomas(2003.4.23)
    →凱旋門賞(仏GI)、”キング・ジョージ”(英GI)、愛ダービー(GI)、愛チャンピオンS(GI)2回、ガネー賞(仏GI)ほか
  77. George Washington(2003.3.1)★
    →英2000ギニー(GI)、クイーンエリザベス2世S(英GI)、フィーニクスS(愛GI)、愛ナショナルS(GI)ほか
  78. Horatio Nelson(2003.4.30)★
    →ジャン・リュック・ラガルデール賞(仏GI)ほか
  79. Rumplestiltskin(2003.2.17)★
    →マルセルブサック賞(仏GI)、モイグレアスタッドS(愛GI)ほか。牝馬
  80. Duke of Marmalade(2004.3.12)
    →”キング・ジョージ”(英GI)、英インターナショナルS(GI)、プリンスオブウェールズS(英GI)、ガネー賞(仏GI)、タタソールズゴールドC(愛GI)ほか
  81. Holy Roman Emperor(2004.3.28)
    →フィーニクスS(愛GI)、ジャン・リュック・ラガルデール賞(仏GI)ほか
  82. Promising Lead(2004.3.6)
    →プリティポリーS(愛GI)ほか。牝馬
  83. Simply Perfect(2004.1.14)
    →ファルマスS(英GI)、フィリーズマイル(英GI)ほか。牝馬
  84. ピーピングフォーン(2004.1.15)
    →愛オークス(GI)、ヨークシャーオークス(英GI)、プリティポリーS(愛GI)、ナッソーS(英GI)ほか。牝馬

……恐るべしは世界を股に掛けた大種牡馬デインヒル。GI勝ちを収めた産駒は84頭に上り、その内訳は牡馬44頭、せん馬7頭、牝馬33頭であり、北半球産馬は40頭、南半球産馬は44頭。世代別に見れば1991年生まれ世代7頭、1992年生まれ世代3頭、1993年生まれ世代6頭、1994年生まれ世代2頭、1995年生まれ世代7頭、1996年生まれ世代6頭、1997年生まれ世代3頭、1998年生まれ世代9頭、1999年生まれ世代9頭、2000年生まれ世代6頭、2001年生まれ世代10頭、2002年生まれ世代5頭、2003年生まれ世代6頭、2004年生まれ世代5頭と、種牡馬として送り込んだ14世代すべてでGI勝ち馬を輩出。英愛首位種牡馬2回、仏国首位種牡馬2回、豪州首位種牡馬に至っては9回。今となっては「1996年の春、ようイーストスタッドにリースしてくれたものやなぁ^^;」と思わざるを得ない、喫驚の成績。デインヒル、正に史上に残る世界的大種牡馬(!!)

#デインヒルが日本に単年供用されて送り込まれたのが1997年生まれ世代。重賞勝ち馬はフサイチソニック(1997.3.24)、ブレイクタイム(1997.5.21)の2頭に留まりましたが、それでもJBISの世代別ランキングによりますと、世代単体の収得賞金ではサンデーサイレンス(1986.3.25)、アフリート(1984.4.10)、トニービン(1983.4.7)に続く4位であり、アーニングインデックスも2.52というサスガの数値でした。

*

デインヒルの血は当初南半球で花開いたように、父系としては主に南半球で世代交代が果たされている感もあります。Flying Spur、Redoute’s Choice、Exceed And Excel、Fastnet Rockが自身同様豪州首位種牡馬に立ち、特にRedoute’s Choiceは直仔スニッツェル(2002.8.24)も豪州首位種牡馬4回と繁殖能力の確かさを伝えています。豪州ではデインヒルが初めて首位種牡馬となった1995年~1996年シーズン以降、2021年~2022年シーズンまでの27シーズンのうち、20シーズンがデインヒル及びデインヒルの子孫によって首位種牡馬が占められています。スニッツェルはカタカナ表記の通り、大社台がシャトル種牡馬として導入されており、その視野の広さに畏敬の念を覚えます。そしてまた南半球発のデインヒル系ということでは、Exceed And Excelの孫サンダースノー(2014.3.24)ダーレー・ジャパンにて供用されています。

他方北半球産のデインヒル系ということでは、名繁殖牝馬Hasiliの初仔であるDansili(1996.1.27)の直仔ハービンジャー(2006.3.12)がやはり大社台により導入され、ディアドラ(2014.4.4)モズカッチャン(2014.2.27)ペルシアンナイト(2014.3.11)ブラストワンピース(2015.4.2)★、ノームコア(2015.2.25)★と既にGI馬5頭を輩出するなど種牡馬として奮闘中です。またデインヒルに続いて英愛首位種牡馬に輝く活躍を見せたDanehill Dancer。同馬は母父Sharpen Up(1969.3.17)が16歳時交配のミニモの遺伝を与えており、直牝系の曾祖母がダンサーズイメージ(1965.4.10)の代表産駒であるLianga(1971)と、私の琴線に触れる存在でした。Danehill Dancerの牡馬の代表産駒とも言えるMastercraftsman(2006.2.19)が、The Grey Gatsby(2011.3.14)Alpha Centauri(2015.2.28)★を輩出した時は嬉しかったものです。

併せて、デインヒルはブルードメアサイアーとしても当然の如く活躍馬を送り込んでおり、数多く名前を挙げずとも、Frankel(2008.2.11)デインドリーム(2008.5.7)Highland Reel(2012.2.21)エイジアンウインズ(2004.3.28)フェノーメノ(2009.4.20)サトノアレス(2014.2.25)等の母父がデインヒル。JBISにおけるデインヒルのBMS成績を確認してみても、本当に枚挙に暇がありません。

*

南北両半球で父系からも母系からも影響を与え続けるデインヒル。1999年夏の月刊『優駿』において、単年供用であったものの新種牡馬として紹介されたデインヒルを正面から捉えた写真が、不思議と心に残っています。鹿毛に星1つ、茫洋とした雰囲気を持つ馬と思ったもの。もちろん既に多くの活躍馬を送り込んでいただけに、先入観はあったのでしょうけれど^^;

デインヒル、その血はサラブレッドの血統の中で末永く伝えられて行くはずです。そんなデインヒル、日本で血統表を開く際にはカタカナで表記出来ることが嬉しくなる、世界的大種牡馬でした。

  

それでは、これから走る馬、人すべてに幸多からんことを。

*

[デインヒル(1986.3.26)の主な競走成績]

  1. スプリントC(英GI)、コーク&オラリーS(英GIII)
  2. 英2000ギニー(GI)、ジュライC(英GI)

通算9戦4勝、2着1回、3着2回。

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