JRA賞になって以降の年度代表馬を辿る(其の参)-イナリワン(1984.5.7)-。

イナリワン牡鹿毛 1984.5.7生～2016.2.7没門別・山本実儀氏生産馬主・保手浜弘規氏大井・福永二三雄厩舎→美浦・鈴木清厩舎

イナリワン(1984.5.7)の4代血統表
★ ミルジヨージ鹿毛 1975.4.12 種付け時活性値：0.00【8】	Mill Reef 鹿毛 1968.2.23	Never Bend 鹿毛 1960.3.15	Nasrullah 1940.3.2
			Lalun 1952
		Milan Mill 鹿毛 1962.2.10	Princequillo 1940
			Virginia Water 1953.4.18
	Miss Charisma 鹿毛 1967	Ragusa 鹿毛 1960.6.15	Ribot 1952.2.27
			Fantan 1952
		マタテイナ鹿毛 1960	Grey Sovereign 1948.3.30
			Zanzara 1951
テイトヤシマ鹿毛 1970.5.12 仔受胎時活性値：1.25【13】	ラークスパー栗毛 1959 種付け時活性値：0.50【10】	Never Say Die 栗毛 1951.3.26	Nasrullah 1940.3.2
			Singing Grass 1944
		Skylarking 栗毛 1950	★Precipitation 1933
			Woodlark 1944
	ヤシマジエツト鹿毛 1960.6.2 仔受胎時活性値：0.25【9】	ソロナウエー鹿毛 1946 種付け時活性値：1.25【13】	Solferino 1940
			Anyway 1935
		ヤシマニシキ鹿毛 1948.6.4 仔受胎時活性値：0.75【11】	セフト鹿毛 1932 種付け時活性値：1.75【15】
			神正栗毛 1938.4.10 仔受胎時活性値：0.25【9】

<5代血統表内のクロス：Nasrullah4×4×5>

イナリワン(1984.5.7)の0の理論的総括
父	母父	祖母父	曾祖母父
★ミルジヨージ (Mill Reef系)	ラークスパー (Never Say Die系)	ソロナウエー (Fairway系)	セフト (The Tetrarch系)
形相の遺伝	料の遺伝	牝系	母の何番仔?
セフト (Agnes Velasquez)	2.50 (【13】+【9】+【11】+【9】)	(No. 5-h 種正系)	7番仔 (4連産目)

1989年の第99回天皇賞・春(GI。京都芝3200m)の結果(上位5頭。馬齢は現年齢表記に合わせる)
着順	馬番	馬名	性齢	騎手	走破時計	着差	調教師	人気
1	1	イナリワン	牡5	武豊	3:18.8	レコード	鈴木清	4
2	13	ミスターシクレノン	牡4	河内洋	3:19.6	5	小林稔	16
3	4	スルーオダイナ	牡5	岡部幸雄	3:20.2	3・1/2	矢野進	1
4	8	ワコーリューオー	牡4	南井克巳	3:20.2	ハナ	伊藤雄二	11
5	16	ランニングフリー	牡6	菅原泰夫	3:20.3	1/2	本郷一彦	2

1989年の第99回天皇賞・春(GI。京都芝3200m)のラップタイム
1F毎のラップ	13.2 – 11.5 – 11.9 – 12.4 – 12.7 – 12.9 – 12.2 – 12.9 – 12.9 – 12.5 – 12.6 – 12.6 – 12.0 – 12.2 – 12.0 – 12.3
ラップの累計タイム	13.2 – 24.7 – 36.6 – 49.0 – 1:01.7 – 1:14.6 – 1:26.8 – 1:39.7 – 1:52.6 – 2:05.1 – 2:17.7 – 2:30.3 – 2:42.3 – 2:54.5 – 3:06.5 – 3:18.8
上り	4F 48.5 – 3F 36.5

「平成の盾男」による、天皇賞・春4連覇の始まりのレースでした。いかな騎乗馬に恵まれたとしても、淀芝3200mのGIを4連覇って(^^;)

イナリワンは中央転厩の後、すばるS(OP)4着、阪神大賞典(GII)5着と、真価を発揮できずにいたところ、この大舞台でテン乗りの武豊騎手に託されたのでした。

そうして、終わってみれば、独走の5馬身差。3分18秒8のコースレコードのオマケも付いて来ました。これは強い。

1989年の第30回宝塚記念(GI。阪神芝2200m)の結果(上位5頭。馬齢は現年齢表記に合わせる)
着順	馬番	馬名	性齢	騎手	走破時計	着差	調教師	人気
1	3	イナリワン	牡5	武豊	2:14.0		鈴木清	2
2	5	フレッシュボイス	牡6	松永幹夫	2:14.1	クビ	境直行	10
3	1	ミスターシクレノン	牡4	河内洋	2:14.7	3・1/2	小林稔	7
4	4	ダイナカーペンター	牡5	丸山勝秀	2:15.0	1・3/4	増本豊	9
5	13	バンブーメモリー	牡4	松永昌博	2:15.4	2・1/2	武邦彦	8

1989年の第30回宝塚記念(GI。阪神芝2200m)のラップタイム
1F毎のラップ	13.1 – 11.1 – 11.4 – 12.4 – 12.3 – 12.1 – 12.1 – 12.2 – 12.4 – 12.5 – 12.4
ラップの累計タイム	13.1 – 24.2 – 35.6 – 48.0 – 1:00.3 – 1:12.4 – 1:24.5 – 1:36.7 – 1:49.1 – 2:01.6 – 2:14.0
上り	4F 49.5 – 3F 37.3

天皇賞・春を制した後、返す刀で挑んだ宝塚記念。あえぐ1番人気馬ヤエノムテキ(1985.4.11)を尻目に、イナリワン、早めスパートからキッチリと脚を伸ばして、決勝点では1歳年長のフレッシュボイス(1983.5.9)の追い込みをクビだけ抑えていました。いきなりの1000mの距離短縮でも負けない。それが天皇賞馬のプライド。春の古馬中長距離GIで、よく見る光景でもあります。

1989年のイナリワンとフレッシュボイスの決着は、「1984年生まれの馬が天皇賞・春でGI初勝利を収めた後、2番人気で挑んだ宝塚記念で、1983年生まれの安田記念勝ち馬を破る」という図式でした。振り返ればそれは、前年1988年のタマモクロス(1984.5.23)とニッポーテイオー(1983.4.21)の戦いの軌跡を辿るかのようでした。

1989年の第40回毎日王冠(GII。東京芝1800m)の結果(上位5頭。馬齢は現年齢表記に合わせる)
着順	馬番	馬名	性齢	斤量	騎手	走破時計	着差	通過順位	上り 4F	馬体重 [増減]	調教師	人気
1	6	オグリキャップ	牡4	59	南井克巳	1:46.7		6-4-4	46.3	498 [+8]	瀬戸口勉	1
2	4	イナリワン	牡5	59	柴田政人	1:46.7	ハナ	7-7-7	46.0	446 [-6]	鈴木清	3
3	7	メジロアルダン	牡4	58	岡部幸雄	1:46.9	1.1/2	3-3-3	46.7	512 [+8]	奥平真治	2
4	5	ウインドミル	牡4	57	蛯沢誠治	1:47.0	クビ	2-2-2	47.2	472 [0]	久保田敏夫	7
5	3	グランドキャニオン	牡4	57	東信二	1:47.2	1.1/2	3-4-4	46.8	460 [-6]	新関力	4

1989年の第40回毎日王冠(GII。東京芝1800m)のラップタイム
1F毎のラップ	12.3 – 11.2 – 11.6 – 12.1 – 12.0 – 12.1 – 12.1 – 11.7 – 11.6
ラップの累計タイム	12.3 – 23.5 – 35.1 – 47.2 – 59.2 – 1:11.3 – 1:23.4 – 1:35.1 – 1:46.7
上り	4F 47.5 – 3F 35.4

イナリワンは2着に敗れたレースではありますが、この毎日王冠を「1989年のベストバウト」とされる方も多いので、ぜひご覧ください。

1989年の第34回有馬記念(GI。中山芝2500m)の結果(上位5頭。馬齢は現年齢表記に合わせる)
着順	馬番	馬名	性齢	騎手	走破時計	着差	調教師	人気
1	15	イナリワン	牡5	柴田政人	2:31.7	レコード	鈴木清	4
2	4	スーパークリーク	牡4	武豊	2:31.7	ハナ	伊藤修司	2
3	12	サクラホクトオー	牡3	小島太	2:32.1	2・1/2	境勝太郎	3
4	9	ランニングフリー	牡6	菅原泰夫	2:32.3	1・1/4	本郷一彦	9
5	1	オグリキャップ	牡4	南井克巳	2:32.5	1	瀬戸口勉	1

1989年の第34回有馬記念(GI。中山芝2500m)のラップタイム
1F毎のラップ	6.9 – 10.9 – 11.7 – 12.1 – 12.3 – 12.6 – 12.8 – 11.9 – 11.8 – 12.1 – 12.2 – 12.2 – 12.2
ラップの累計タイム	6.9 – 17.8 – 29.5 – 41.6 – 53.9 – 1:06.5 – 1:19.3 – 1:31.2 – 1:43.0 – 1:55.1 – 2:07.3 – 2:19.5 – 2:31.7
上り	4F 48.7 – 3F 36.6

上述の毎日王冠2着の後、天皇賞・秋(GI)6着、ジャパンカップ(GI)11着と精彩を欠いたイナリワン。

けれど、1989年の掉尾を飾る大一番で、さながら紅白歌合戦のトリを務める演歌歌手のように、締めました。

イナリワン。1989年は春秋を通じて年間GI3勝の活躍を遂げ、平成最初のJRAの年度代表馬になりました。天皇賞・春を3分18秒8のレコードで勝ち、有馬記念を2分31秒7のレコードで勝つ。高速決着に強いステイヤーだったイナリワン、450kg前後の小柄な馬体でも、走りのスケールは雄大。「平成三強」の一角を担ったイナリワン、中央で挙げた3勝はすべてGIレースという、ここ一番の勝負強さが光った名馬でした。

イナリワンの属する1984年生まれ世代は、タレントが揃ったひとつ下の最強世代、1985年生まれ世代に隠れがちではありますが