エルウェーウィン(1990.2.24)-タイム差なしの好勝負を辿る(No.22)-

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エルウェーウィン 牡 黒鹿毛 1990.2.24生~2016.4.7没 愛・Ermine Holdings生産 馬主・雑古 隆夫氏 栗東・坪 憲章厩舎

エルウェーウィン(1990.2.24)の4代血統表
Caerleon
鹿毛 1980.3.27
種付け時活性値:0.25【9】
Nijinsky
鹿毛 1967.2.21
Northern Dancer
鹿毛 1961.5.27
Nearctic 1954.2.11
Natalma 1957.3.26
Flaming Page
鹿毛 1959.4.24
Bull Page 1947
Flaring Top 1947.3.27
Foreseer
黒鹿毛 1969.4.12
Round Table
鹿毛 1954.4.6
Princequillo 1940
Knight’s Daughter 1941
Regal Gleam
黒鹿毛 1964.3.17
Hail to Reason 1958.4.18
Miz Carol 1953.6.1
Rustic Lace
芦毛 1981.1.20
仔受胎時活性値:2.00(0.00)【8】
Rusticaro
芦毛 1975.5.14
種付け時活性値:1.25【5】
Caro
芦毛 1967.4.11
フオルテイノ 1959.4.19
Chambord 1955
Rustica
芦毛 1966.4.6
Ribot 1952.2.27
Ruthin 1955
Lacey Brief
鹿毛 1973.5.5
仔受胎時活性値:1.75【7】
★Roi Dagobert
黒鹿毛 1964.2.25
種付け時活性値:0.00【8】
Sicambre 1948
Dame d’Atour 1955
Mizzen
黒鹿毛 1965.2.22
仔受胎時活性値:1.75【7】
★New Providence
鹿毛 1956.5.10
種付け時活性値:0.00【8】
Reply
鹿毛 1951
仔受胎時活性値:1.25【13】

<5代血統表内のクロス:Bull Page4×5>

エルウェーウィン(1990.2.24)の0の理論的総括
母父 祖母父 曾祖母父
Caerleon
(Nijinsky系)
Rusticaro
(フオルテイノ系)
Roi Dagobert
(Sicambre系)
New Providence
(Teddy系)
形相の遺伝 料の遺伝 牝系 母の何番仔?
Rusticaro
(フオルテイノ)
6.75 or 4.75
(【8】+【7】+【7】+【13】)
母が愛GIII2着馬
(No. 4-g)
4番仔

*

1992年の第44回朝日杯3歳S(GI。中山芝1600m)の結果(上位5頭。馬齢は現年齢表記に合わせる)


馬名 性齢 騎手 走破
時計
着差 調教師
1 4 エルウェーウィン 牡2 南井 克巳 1:35.5 坪 憲章 3
2 7 ビワハヤヒデ 牡2 岸 滋彦 1:35.5 ハナ 濱田 光正 1
3 9 ホクトフィル 牡2 柴田 政人 1:35.7 1・1/2 中野 隆良 8
4 1 インターマイウェイ 牡2 的場 均 1:35.7 クビ 中村 均 6
5 8 ニホンピロスコアー 牡2 岡部 幸雄 1:35.8 1/2 伊藤 雄二 2
1992年の第44回朝日杯3歳S(GI。中山芝1600m)のラップタイム
1F毎の
ラップ
12.8 – 10.9 – 11.8 – 12.0 – 12.4 – 12.1 – 11.7 – 11.8
ラップの
累計タイム
12.8 – 23.7 – 35.5 – 47.5 – 59.9 – 1:12.0 – 1:23.7 – 1:35.5
上り 4F 48.0 – 3F 35.6

1990年生まれ世代の現年齢表記2歳王者決定戦。単勝1.3倍の圧倒的1番人気に推されたビワハヤヒデ(1990.3.10)。新馬戦1.7秒差の大差圧勝の後、もみじS(OP)1分34秒3、デイリー杯3歳S(GII)1分21秒7と連続レコード勝ちならば、致し方なし。彼の真価は、実は3歳秋以降に見せ付けられるのですが、それはまた、別のお話。

JRA賞年度代表馬を辿る(其の漆)-ビワハヤヒデ(1990.3.10)-
ビワハヤヒデ 牡 芦毛 1990.3.10生~2020.7.21没 福島・早田牧場新冠支場生産 馬主・(有)ビワ 栗東・浜田光正厩舎

本稿の主役エルウェーウィンは、新馬戦をタイム差なしのハナ差勝ち、京都3歳S(OP)をマルカツオウジャ(1990.5.4)と同着で1着。3戦3勝の芦毛馬と2戦2勝の黒鹿毛馬の背には、共に岸滋彦騎手の姿がありました。元号が平成に変わった1989年以降の4年を見ると、1989年にサンドピアリス(1986.5.17)のエリザベス女王杯(GI)、1990年にエイシンサニー(1987.3.29)の優駿牝馬(GI)、1991年と1992年にダイタクヘリオス(1987.4.10)によるマイルチャンピオンシップ(GI)連覇と、GIレースにおいてキシキシュの活躍がまま見られたのです。故に良馬が集まってくるのも自明。この2歳王者決定戦での騎乗馬を天秤に掛けた時、ビワハヤヒデを選ばれたのは、その勝ちっぷりからも必然でした。そうして、背が空いたエルウェーウィンの新しい鞍上に据えられたのは南井克巳騎手。南井騎手に白羽の矢が立ったのは、後の奇縁を思う時に当然だったのでしょうか。

レースはシュアリーウィン(1990.5.9)が果敢な逃げを見せて始まり、ビワハヤヒデは王者の競馬をすべく3番手、エルウェーウィンはそれを見るように6番手の集団に位置しました。迎えた中山芝の直線310m。かたや、ここまで楽な勝ちっぷりだったビワハヤヒデ。初めて自身に喰らい付いて来た馬に面食らったのでしょうか。こなた、ここまでハナ差、同着と意地でも勝利を収めて来たエルウェーウィン。最後は南井騎手の豪腕と気迫の力も借りて、やはりタイム差なしのハナ差で、強敵を打ち破りました。エルウェーウィン3戦3勝、すべてタイム差なしの勝利を以て、1992年のJRA最優秀2歳牡馬に選出されたのでした。

この第44回朝日杯3歳が、エルウェーウィン、シンコウラブリイ(1989.2.2)、ビワハイジ(1993.3.7)フサイチコンコルド(1993.2.11)ゼンノエルシド(1997.3.26)と5頭のJRA・GI馬を送り込むことになった名種牡馬Caerleonにとって、初めてのJRA・GI勝ちでもありました。いずれも思い出深い馬たちですが、私にとっては「愛国からのベストマイラー」シンコウラブリイが、この5頭中では筆頭に上がります。

Caerleon(1980.3.27)-北の踊り子とその子孫を辿る(No.10)-
Caerleon(カーリアン) 牡 鹿毛 1980.3.27生~1998.2.2没 米国・Claiborne Farm生産 馬主・Robert Sangster 愛国・Vincent O’Brien厩舎
思い出の女馬を辿る(其の弐)-シンコウラブリイ(1989.2.2)-
シンコウラブリイ 牝 鹿毛 1989.2.2生~2011.12.5没 愛国・B. R. and Mrs Firestone生産 馬主・安田修氏 美浦・藤沢和雄厩舎

本稿でエルウェーウィンを紹介したことにより、弊サイトではCaerleon産駒のJRA・GI馬5頭を全馬記したことになりました。まま、それだけ産駒が走っていたということですね。という訳でエルウェーウィン、3歳以降は思うような結果が出せず、もがいていました。そんな彼が、驚くべき一撃を放ったのが、6歳時のアルゼンチン共和国杯(GII)でした。

1996年の第34回アルゼンチン共和国杯(GII。東京芝2500m)の結果(上位5頭。馬齢は現年齢表記に合わせる)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 通過
順位
上り
3F
馬体重
[増減]
調教師
1 7 エルウェーウィン 牡6 53 南井克巳 2:31.8 17-17-14-8 35.7 432
[-6]
坪憲章 14
2 8 トウカイパレス 牡4 56 佐藤哲三 2:32.0 1.1/2 13-13-14-13 35.4 476
[-6]
中村均 3
3 16 カミノマジック 牡5 57 菊沢隆仁 2:32.3 1.3/4 10-11-6-4 36.5 448
[+4]
工藤嘉見 2
4 15 シグナスヒーロー 牡4 52 蛯名正義 2:32.3 クビ 13-13-12-9 36.0 494
[+4]
田中清隆 9
5 6 オースミベスト 牡4 55 藤田伸二 2:32.4 3/4 5-5-4-4 36.7 454
[-12]
小林稔 1
1996年の第34回アルゼンチン共和国杯(GII。東京芝2500m)のラップタイム
1F毎の
ラップ
7.4 – 11.4 – 11.3 – 11.9 – 11.8 – 12.1 – 12.4 – 12.5 – 12.2 – 12.3 – 12.7 – 11.8 – 12.0
ラップの
累計タイム
7.4 – 18.8 – 30.1 – 42.0 – 53.8 – 1:05.9 – 1:18.3 – 1:30.8 – 1:43.0 – 1:55.3 – 2:08.0 – 2:19.8 – 2:31.8
上り 4F 48.8 – 3F 36.5

53kgのハンデは、2歳時の朝日杯3歳S以来3年11ヶ月も勝利から見放されていた馬に対して妥当だったのでしょう。その朝日杯3歳Sでもパートナーを務めた南井騎手が、軽ハンデも味方にして、エルウェーウィンの眠っていた末脚を復活させました。エルウェーウィンのキャリアを辿れば、2000m超級のレースの出走は、3歳時の有馬記念(GI)以来のことでした。まったく新しい顔ぶれの中に入ったエルウェーウィン。気持ちがリフレッシュしたのか、チャレンジャーの闘志を持って、2着のトウカイパレス(1992.4.16)に1馬身半差を着けて見事に勝利を収めたのでした。

なお、このアルゼンチン共和国杯のレース当日である1996年11月16日には、東京競馬場ナリタブライアン(1991.5.3)の引退式もありました。エルウェーウィン、朝日杯3歳Sでは兄ビワハヤヒデから主役の座を奪い、アルゼンチン共和国杯の開催日には弟ナリタブライアンから(一応)主役の座を奪いましたね。南井騎手も、朝日杯ではエルウェーウィンで兄を負かし、負かした相手の弟で朝日杯連覇を果たし、その弟の引退式当日に再びエルウェーウィンで勝利を収めるという連環でした。馬と人、縁は巡ります。

そしてまた、エルウェーウィンの勝利はこのアルゼンチン共和国杯だけで終わらず、翌1997年3月には中山芝2200mで行われたブラッドストーンS(OP)でも、2着のインターフラッグ(1993.4.13)に2と2分の1馬身差の快勝を収めました。

1997年のブラッドストーンS(OP。中山芝2200m)の結果(上位5頭。馬齢は現年齢表記に合わせる)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 通過
順位
上り
3F
馬体重
[増減]
調教師
1 7 エルウェーウィン 牡7 57 的場均 2:16.2 5-6-6-3 35.9 442
[0]
坪憲章 3
2 6 インターフラッグ 牡4 55 南井克巳 2:16.6 2.1/2 8-6-6-6 36.2 424
[0]
工藤嘉見 1
3 2 ステージプリマ 牝5 54 坂本勝美 2:16.8 1 2-2-2-2 36.8 512
[-4]
野平祐二 4
4 8 アドマイヤラピス 牝5 54 岡部幸雄 2:16.8 アタマ 4-4-4-3 36.6 432
[-10]
橋田満 2
5 4 フライトスズカ 牡5 56 横山典弘 2:17.0 1.1/4 2-2-2-1 37.1 486
[0]
橋田満 5
1997年のブラッドストーンS(OP。中山芝2200m)のラップタイム
1F毎の
ラップ
13.0 – 12.6 – 13.4 – 12.8 – 12.7 – 12.0 – 11.6 – 11.8 – 11.9 – 12.1 – 12.3
ラップの
累計タイム
13.0 – 25.6 – 39.0 – 51.8 – 1:04.5 – 1:16.5 – 1:28.1 – 1:39.9 – 1:51.8 – 2:03.9 – 2:16.2
上り 4F 48.1 – 3F 36.3

私が競馬を見始めた時はまだ中山芝3200mのオープン特別だったブラッドストーンS、距離短縮がなされて中山芝2200mで行われた唯一の回だった1997年。土曜日の開催でしたからKBS京都の競馬中継でレースを見ていた記憶があります。朝日杯3歳Sとアルゼンチン共和国杯とブラッドストーンSの結果を見ると、「自分を袖にした騎手が上位人気馬に騎乗した時にエルウェーウィンの闘志に火が付いた」という感じも無きにしも非ず。なお、このブラッドストーンSは出走8頭中最も重い57kgを背負っての勝利でした。エルウェーウィン、自力の確かさを改めて見せたのです。

6歳秋から7歳春にかけて、2度の勝利を収めてみせた2歳王者エルウェーウィン。その復活劇、ただただお見事でした。

 

それでは、これから走る馬、人すべてに幸多からんことを。

*

[エルウェーウィン(1990.2.24)の主な競走成績]

  1. 朝日杯3歳S(GI)、アルゼンチン共和国杯(GII)
  2. マイラーズC(GII)2回

通算40戦5勝、2着2回、3着7回。

*

マイシンザン
マイシンザン

エルウェーウィン、やっぱり根性がある馬やったなぁ。ナリは小さかったけれど、勝負強さが無ければ、2歳時に3戦連続タイム差なしで勝利を収められへんよ。

ワイルドブラスター
ワイルドブラスター

ええ。そしてまた6歳時、7歳時と齢重ねて勝利も重ねられたのですから、素晴らしい。

マイシンザン
マイシンザン

ホンマに。誇らしい同期生、1990年生まれ世代の1頭やわ。

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