Lashkari(ラシュカリ) 牡 鹿毛 1981.4.3生~1996.12.25没 英国・HH Aga Khan生産 馬主・HH Aga Khan 仏国・Alain de Royer-Dupre厩舎
Mill Reef 鹿毛 1968.2.23 種付け時活性値:1.00【12】 |
Never Bend 黒鹿毛 1960.3.15 |
Nasrullah 鹿毛 1940.3.2 |
Nearco 1935.1.24 |
Mumtaz Begum 1932 | |||
Lalun 鹿毛 1952 |
Djeddah 1945 | ||
Be Faithful 1942 | |||
Milan Mill 鹿毛 1962.2.10 |
Princequillo 鹿毛 1940 |
Prince Rose 1928 | |
Cosquilla 1933 | |||
Virginia Water 芦毛 1953.4.18 |
Count Fleet 1940.3.24 | ||
Red Ray 1947 | |||
Larannda 栗毛 1971.2.20 仔受胎時活性値:0.25【9】 |
Right Royal 黒鹿毛 1958.3.23 種付け時活性値:1.00【12】 |
Owen Tudor 黒鹿毛 1938 |
Hyperion 1930.4.18 |
Mary Tudor II 1931 | |||
Bastia 鹿毛 1951 |
★Victrix 1934 | ||
Barberybush II 1934 | |||
Morning Calm 鹿毛 1960 仔受胎時活性値:0.50【10】 |
Crepello 栗毛 1954 種付け時活性値:1.25【5】 |
Donatello II 1934 | |
Crepuscule 1948 | |||
Bara Bibi 鹿毛 1951 仔受胎時活性値:2.00(0.00)【8】 |
Bois Roussel 黒鹿毛 1935 種付け時活性値:1.75【15】 |
||
Masaka 鹿毛 1945 仔受胎時活性値:1.25【5】 |
<5代血統表内のクロス:Nearco4×5、Hyperion4×5、Pharos5×5、Blenheim5×5>
父 | 母父 | 祖母父 | 曾祖母父 |
---|---|---|---|
Mill Reef (Never Bend系) |
Right Royal (Owen Tudor系) |
Crepello (Blenheim系) |
Bois Roussel (St.Simon系) |
形相の遺伝 | 料の遺伝 | 牝系 | 母の何番仔? |
Bois Roussel (Bara Bibi) |
4.00 or 2.00 (【9】+【10】+【8】+【5】) |
シルバーシヤークと同牝系 (No. 5-e) |
3番仔? (2連産目?) |
*
着 順 |
馬 番 |
馬名 | 性齢 | 斤 量 |
騎手 | 走破時計 ・着差 |
調教師 | 人 気 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | Lashkari | 牡3 | 55.3 | Yves Saint-Martin | 2:25 1/5 | Alain de Royer-Dupre | 11 |
2 | 7 | All Along | 牝5 | 55.8 | Angel Cordero, Jr. | クビ | Patrick L. Biancone | 2 |
3 | 5 | Raami | 牡3 | 55.3 | Fernando Toro | 1/2 | Darrell Vienna | 5 |
4 | 3 | Strawberry Road | 牡5 | 57.2 | William Shoemaker | 1/2 | John Nicholls | 3 |
5 | 1 | Alphabatim | 牡3 | 55.3 | Greville Starkey | 1 3/4 | Guy Harwood | 9 |
2023年の現在に続く米国の競馬の祭典ブリーダーズカップ・ワールド・チャンピオンシップ。その初年度1984年の6番目のレース、いわゆる準メインはブリーダーズカップ・ターフ。選手権距離の芝王者を決める一戦に集まった11頭、上位人気を確認してみますと、
- Majesty’s Prince(1979.3.24)
→ロスマンズインターナショナル(加GI)2回、マンノウォーS(米GI)2回、ソードダンサーH(米GI)ほか。牡馬 - All Along(1979.4.17)
→凱旋門賞(仏GI)、ワシントンDCインターナショナル(米GI)、ロスマンズインターナショナル(加GI)、ターフクラシックS(米GI)、ヴェルメイユ賞(仏GI)ほか。牝馬 - Strawberry Road(1979.9.28)
→コックスプレート(豪GI)、AJCダービー(豪GI)、バーデン大賞(独GI)、クイーンズランドダービー(豪GI)、ローズヒルギニーズ(豪GI)ほか。後にサンクルー大賞(仏GI)勝ちも追加。牡馬 - Gato Del Sol(1979.2.23)
→ケンタッキーダービー(米GI)ほか。牡馬 - Morcon(1980.3.17)とRaami(1981.3.8)
→同一馬主によるカップリング扱い。前者はプリンスオブウェールズS(英GII)、ウェストベリーS(英GIII)の勝ち馬。後者はGレース勝ちは無かったもののラトガーズH(米GII)2着、オークトゥリー招待(米GI)3着
というところ。当時9歳(!!)にして2回目の最盛期を迎えていた米GI16勝の名せん馬John Henry(1975.3.9)の姿はありませんでしたが、それでもMajesty’s Prince、All Along、Strawberry Roadと上位人気3頭を並べてみれば時を代表する芝の強豪馬が揃っています。そうして前文で名前を出した4頭、カタカナ馬名表記すればジョンヘンリー、マジェスティーズプリンス、オールアロング、ストロベリーロード。いずれも最初期のジャパンカップ(GI)に出走してくれているのですから、日本中央競馬会の熱意も併せて思うところです。
と書いてみて、本稿の主役であるLashkariの名前が出て来ていないのですが、All Alongと同様に仏国調教馬であったLashkari。戦前までの成績を辿れば、当年4月にロンシャン芝2400mのマロニエ賞でデビュー勝ちを収めると、ほぼ月1回のペースで出走して、9月のエヴリ芝2400mのブレヴィエール賞、10月のロンシャン芝2400mのコンセイユ・ド・パリ賞(仏GII)1着と連勝を収めてやって来た8戦目が、初めての海外遠征であったブリーダーズカップ・ターフ。デビュー以来2400m以上の距離のレースしか走っていない「これでもか」という極めつけの選手権距離ランナーであったLashkari。「戦前までイヴ・サンマルタン騎手が騎乗した芝2400mでは4戦3勝、2着1回であった」なんて後付で言ってみても、仏国のGII勝ちに留まる戦績では……と思われたのか、フタを開けてみれば出走11頭中の最下位人気だったのでした。
ただ、勝負はやってみなければ分からないもの。
3番人気のStrawberry Roadの逃げで始まったハリウッドパーク芝12ハロン、1番人気のMajesty’s Princeは9番手と後方追走、2番人気のAll Alongは7番手。ならばドンジリ人気のLashkariはと見れば内の2番枠からの発走を利して内ラチ沿いを6番手。Strawberry Roadが作り出したペースは4ハロン通過49秒1/5、6ハロン通過1分13秒1/5という淀みない流れ。その6ハロン通過あたりで米国競馬名誉の殿堂入りの名手アンヘル・コルデロ・ジュニア騎手がAll Alongを促して馬場中央を3番手にエスコート。All Alongの力量をよくよくご存知であったろうサンマルタン騎手は「彼女等の進むコースは前が塞がらない」と判断されたのでしょう。1マイル通過1分37秒4/5の後、All Alongをキレイに外からマークするような形で進出。うーむ、進路を内から外に持ち出すその巧みさ、サスガは仏国の至宝の華麗なる手綱さばき。
10ハロン通過2分1秒1/5、そうして最終コーナーでは既に先頭であったAll Alongを追い駆けたLashkari。直線、先を行くAll Alongの末脚はそれまで仏米GI4勝の強さを充分に感じるもの。しかし、追う側のLashkariの脚色もまた確かでした。共に欧州の競馬ではよくよく知られた勝負服。ダニエル・ヴィルデンシュタインの青い勝負服、アガ・カーンIV世の緑の勝負服。コルデロ騎手のモンキー乗りの左ムチ、サンマルタン騎手のヨーロピアンアクションの右ムチ。内の5歳の鹿毛の牝馬、外の3歳の鹿毛の牡馬。共に額の流星が麗しい2頭の勝負、最後は父Mill Reef同様に白いブリンカーを着けたLashkariが、僅かに「クビ」だけ差し切ったところが12ハロン2分25秒1/5のゴールポスト。
本当の意味でのブービー人気だったLashkari、日本風に言うと単勝54.4倍という低人気に反発して見事なアップセットを見せると共に、終わってみれば仏国調教馬によるワンツーフィニッシュ。ブリーダーズカップ・ターフは2023年の現在でも欧州調教馬の活躍がまま見られますが、その先鞭は第1回のLashkariとAll Alongによって付けられていたのでした。
思えば第1回ブリーダーズカップの勝ち馬には、後にアガ・カーンIV世に20世紀末の欧州最強馬を贈ることに寄与した馬が2頭いたことになりますね。ブリーダーズカップ・ジュヴェナイル(米GI)を制したChief’s Crown(1982.4.7)が直系祖父、本稿の主役であるブリーダーズカップ・ターフの勝ち馬Lashkariが母父と、共に4代血統表で2代父として送り込んだのがSinndar(1997.2.27)。同馬は2000年に英ダービー(GI)、愛ダービー(GI)、凱旋門賞と3カ国で選手権距離GIを制してカルティエ賞最優秀3歳牡馬に選出されました。年が年ならカルティエ賞年度代表馬に選ばれてもおかしくない成績でしたが、年度代表馬はGiant’s Causeway(1997.2.14)が受賞しました。1997年生まれ世代に傑出した3歳牡馬2頭がいたため、賞を分け合ったというところでした。
それでは、これから走る馬、人すべてに幸多からんことを。
*
[Lashkari(1981.4.3)の主な競走成績]
- ブリーダーズカップ・ターフ(米GI)、コンセイユドパリ賞(仏GII)
- ドーヴィル大賞(仏GII)
- エドゥヴィル賞(仏GIII)、リス賞(仏GIII)
通算13戦5勝、2着2回、3着2回。
#ブリーダーズカップ・ターフ勝ち馬の調教国を確認しますと、
米国14勝、英国12勝、愛国7勝、仏国6勝、加国1勝。北米15勝に対して欧州25勝。やはり芝競馬となりますと、欧州勢が頑張っています。米国の小回りのターフニモマケズというところですが、それでも最多勝は主たる開催国である米国が保持しているところはサスガ。