キヨウワサンダー牝 芦毛 1981.4.12生~1987.8.12没 新冠・協和牧場生産 馬主・浅川 吉男氏 栗東・吉岡 八郎厩舎
ゼダーン 芦毛 1965 種付け時活性値:1.75【15】 |
★ Grey Sovereign 芦毛 1948.3.30 |
Nasrullah 鹿毛 1940.3.2 |
Nearco 1935.1.24 |
Mumtaz Begum 1932 | |||
Kong 芦毛 1933 |
Baytown 1925 | ||
Clang 1925 | |||
Vareta 芦毛 1953 |
Vilmorin 芦毛 1943 |
Gold Bridge 1929 | |
Queen of the Meadows 1938 | |||
Veronique 鹿毛 1937 |
Mon Talisman 1924 | ||
Volubilis 1922 | |||
キヨウワレデイ 鹿毛 1972.5.15 仔受胎時活性値:2.00【8】 |
バウンテイアス 鹿毛 1958 種付け時活性値:1.25【13】 |
★Rockefella 黒鹿毛 1941 |
Hyperion 1930.4.18 |
Rockfel 1935 | |||
Marie Elizabeth 栗毛 1948 |
Mazarin 1938 | ||
Miss Honor 1932 | |||
キタノフジ 鹿毛 1959.4.2 仔受胎時活性値:1.00【12】 |
★ライジングライト 鹿毛 1942 種付け時活性値:0.00【16】 |
Hyperion 1930.4.18 | |
Bread Card 1931 | |||
キタノヒカリ 栗毛 1954.5.25 仔受胎時活性値:1.00【4】 |
トサミドリ 鹿毛 1946.5.20 種付け時活性値:1.75【7】 |
||
バウアーヌソル 鹿毛 1938.3.25 仔受胎時活性値:1.75【15】 |
<5代血統表内のクロス:Hyperion4×4(母方)>
父 | 母父 | 祖母父 | 曾祖母父 |
---|---|---|---|
ゼダーン (Grey Sovereign系) |
バウンテイアス (Rockefella系) |
★ライジングライト (Hyperion系) |
トサミドリ (Blandford系) |
形相の遺伝 | 料の遺伝 | 牝系 | 母の何番仔? |
ゼダーン | 5.75 (【8】+【12】+【4】+【15】) |
ヒカリデユールと同牝系 (サラ系 バウアーストツク系) |
4番仔 (2連産目) |
*
着 順 |
馬 番 |
馬名 | 性齢 | 騎手 | 走破 時計 |
着差 | 調教師 | 人 気 |
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1 | 18 | キョウワサンダー | 牝3 | 樋口 弘 | 2:28.4 | 吉岡 八郎 | 14 | |
2 | 8 | キクノペガサス | 牝3 | 南井 克巳 | 2:28.4 | アタマ | 宇田 明彦 | 5 |
3 | 2 | ダイアナソロン | 牝3 | 田原 成貴 | 2:28.6 | 1・1/4 | 中村 好夫 | 1 |
4 | 10 | トウカイローマン | 牝3 | 岡富 俊一 | 2:28.8 | 1・1/4 | 中村 均 | 8 |
5 | 20 | カミモリレディー | 牝3 | 柴田 光陽 | 2:28.9 | 1/2 | 清田 十一 | 12 |
京都芝2400m、晴の良馬場、21頭立て。
現年齢表記3歳牝馬による三冠戦線の最終戦であった京都芝2400mのエリザベス女王杯。日本中央競馬会のグレード制導入初年度の1984年の一戦を制したのは、戦前14番人気だったキョウワサンダー。21頭立ての道中は後方2番手を進んでいた、橙の帽子に「赤、緑縦縞、袖白二本輪」の勝負服、赤い頭巾を着けた芦毛馬。淀の芝外回りの勝負どころである3角から4角、下りを利して大外ぶん回しで一気に伸びて来たキョウワサンダー、最後の直線はやはり道中後方に構えていたキクノペガサス(1981.4.28)との勝負。激しい鍔迫り合いの末、決勝点で僅かに「アタマ」だけ先んじたのはキョウワサンダー。人気薄馬の大番狂わせではありましたが、電光石火の末脚で一気にGI勝ち馬に上り詰めました。
キョウワサンダーのエリザベス女王杯勝ちは、2024年の現在も特筆されることがあります。それは「日本中央競馬会のグレード制導入後唯一のサラ系馬によるGI勝利である」ということ。キョウワサンダーの5代母である豪州産の牝馬バウアーストツク(1922)は出自不明の為に「サラ系」の烙印を押されてしまいました。Webを渉猟すると、父母は特定されているという説もチラホラ見えますが、真相は闇の中です。
しかしながら、実は、オーストラリアン・スタッドブック第14巻に記載のあるBrown Meg(父Baverstock、母Frivolity)という牝馬が、血統不明のバウアーストックと同一とする見解がある。
(中略)
実はそれを裏づける資料も現存している。国立国会図書館のデジタルコレクションに保管されてる当時の帝国競馬協会の競走成績書の写しには、確かにバウアーストツク(濠(=豪)サラ・父バヴアストツク、母フリヴオリチー)と父母名もはっきりと記載されており、これはBrown Megの父母を当時のカタカナ読みにすればそのままである。
Brown Meg(1922)の血統表に関してはEquineline.comのFREE 5-Crossでも確認できます。父Baverstock(1911)、母Frivolity(1914)。Thoroughbred Horse Pedigree Queryに至っては、Baverstockとして父Baverstock、母Frivolityの組み合わせで登録されており、そのボトムラインは8号族e分枝系です。
では、以下にキョウワサンダーの近親牝系図を示しておきます。なお、近親牝系図内のレース名、格付けはいずれも施行当時のものです。
バウアーヌソル 1938.3.25 不出走 |キタノオー 1953.5.15 16勝 天皇賞・春 菊花賞 朝日杯3歳S NHK杯 スプリングS オールカマー セントライト記念ほか |キタノヒカリ 1954.5.25 3勝 朝日杯3歳S ||キタノフジ 1959.4.2 1勝 |||キヨウワレデイ 1972.5.15 8勝 北関東ダービー ||||キヨウワサンダー 1981.4.12 (本馬) 4勝 エリザベス女王杯(GI) 大原S(OP) ||アイテイオー 1960.4.2 4勝 優駿牝馬ほか |||アイテイグレース 1967.3.13 0勝 ||||ヒカリデユール 1977.3.6 10勝 有馬記念 サンケイ大阪杯 朝日チャレンジCほか ||||キタノデユール 1979.4.5 3勝 |||||ホクセイアンバー 1989.3.21 6勝 小倉記念(GIII) |||チエリースター 1969.3.12 2勝 ||||イズミスター 1982.6.7 6勝 金鯱賞(GIII)ほか |||アイテイシロー 1971.2.28 4勝 京都牝馬特別 ||キタノダイオー 1965.4.6 7勝 北海道3歳S 函館3歳S |キタノオーザ 1957.6.30 6勝 菊花賞 セントライト記念ほか
キョウワサンダーは近親にこれだけ活躍馬がいれば、紛れも無い「良血」。キョウワサンダーの高祖母バウアーヌソルの仔にキタノオー、キタノヒカリ、キタノオーザという現行のGI級競走を制した3きょうだいが見え、キョウワサンダーの曾祖母でもあるキタノヒカリからは娘に優駿牝馬勝ち馬アイテイオー、曾孫にヒカリデュールも送り出されています。なお、ヒカリデュールはサラ系馬として唯一中央競馬の年度代表馬となった馬でもあります。
キョウワサンダーは初仔の牡馬サンダーキッド(1987.6.15)を産んだ後、満6歳時の夏に早世しました。2024年現在、残念ながらバウアーストツク系のボトムラインは途切れてしまったようですけれど、「キョウワサンダーが牝馬を残せていたら」と、諸々の難しさを思いつつ、考えてしまいます。キョウワサンダーの直仔はサラ系のハンデを背負ってしまうものの、世代重ねてヴィークル・メアとなる子孫が現れたかも知れません。さりとて、消え行く血のわずかな延命であっただけかも知れませんが……。
それでも、キョウワサンダーがエリザベス女王杯で見せた、稲妻のような末脚が褪せることはありません。
キョウワサンダーの4代血統表と近親牝系図、そしてエリザベス女王杯のレース映像と成績を併せて紹介する本稿を、キョウワサンダーとバウアーストツク系に対する、せめてもの手向けとしたいと思います。
それでは、これから走る馬、人すべてが無事でありますように。
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[キヨウワサンダー(1981.4.12)の主な競走成績]
- エリザベス女王杯(GI)
- サファイヤS(GIII)
通算23戦4勝、2着6回、3着3回。
#人気薄の馬が秋の京都芝2400mの3歳牝馬GIで初めての重賞勝ちを収め、桜花賞(GI)馬が3着、優駿牝馬(GI)勝ち馬が4着という構図は、8年後の1992年のエリザベス女王杯にも通じるところを感じました。ニシノフラワー(1989.4.19)、アドラーブル(1989.3.28)、タケノベルベット(1989.3.13)。